3月に成立した2023年度予算における一般会計歳出総額は、114兆3,812億円と過去最大規模となりました。一方、一般会計歳入総額は、税収が69兆4,400億円、新規国債発行額は35兆6,230億円となりました。国債残高は年々増加しており、国の財政は不健全な状況が続いています。

こうした国の予算などを見るにあたって、「兆円」という数字はあまりに大きく実感に乏しいため、下表で家計に例えてみました。なお、下文の( )内は政府予算の該当部分を示します。

家計の年収を360万円と仮定すると、月々の給与(税収+税外収入)は30万円となります。家計における1ヵ月の生活費(一般歳出)は、通院・薬代(社会保障)のほか、教育費(文教および科学振興)、家の修理代(公共事業)などもかかるため、合計で28万円が必要です。既に、この時点で家計は給与を概ね使い切っていますが、その他にも、実家への仕送り(地方交付税交付金)に6万円、ローン元利金返済(国債費)に10万円を充てなければならず、結局、足りないお金14万円を新たな借金(国債発行)で賄わなくてはなりません。従来のローン返済を行なう一方でその返済額の1.4倍近い新しい借金をしなくてはならないうえ、こうした状況が長い間続いていることから、現在ではローン(借入)残高が約4,882万円にのぼる事態となっています。

2023年度は、景気回復が一層進むと想定され、税収は過去最高となる見通しです。しかし、ロシアによるウクライナ侵攻を踏まえ、日本の防衛力を抜本的に強化するため、長射程ミサイルや艦艇の購入、弾薬や装備品の維持整備などを行なうとして、防衛費は10兆1,686億円と、2022年度当初予算と比べてほぼ倍増し、予算全体を押し上げました。また、高齢化による医療や介護費用の増加で社会保障費も膨らむほか、新型コロナウイルスや原油・物価高などの対策予備費も計上されており、ほかの政策に予算を振り向ける余力は狭まっています。

国は国内外に資産を保有しているほか、国内金利も低い状況にあることなどから、直ちに大きな支障が生じる状況にはないとみられています。ただし、家計に置き換えた例でもわかるとおり、赤字体質が解消されずに借金残高が今後も積み上がれば、日本の財政に対する信頼性がさらに低下する懸念もあり、財政健全化に向けた取り組みが重要であることには変わりありません。

【図表】[左図]2023年度政府予算、[右図]家計(1ヵ月分)に例えた場合
  • 上記は2023年度政府予算をシンプルに解説することを目的としたものです。