米国株人気の一方、ポートフォリオの偏重懸念も
企業の長期的な成長力などが評価され、米国株投資が人気です。一方で、ポートフォリオが米国株に偏り、リスクの点で問題視されるケースもあります。一般に、値動きの異なる資産に投資を行なう「分散投資」は、ポートフォリオ全体のリスクを抑制し、効率的なリターンの獲得につながるとされます。では、米国株と相性の良い(値動きが異なる)株式には、どのようなものがあるでしょうか。

米国株との相関を探る
左下の表は、主要国・地域の代表的な株価指数を用い、2000年以降の月次騰落率(円ベース)の「相関」を示したものです。

相関係数とは、2つの資産間の値動きの連動を表す数値であり、1から-1の間で、1に近いほど同じような値動き(正の相関)に、-1に近いほど異なる値動き(負の相関)になることを表します。これを見ると、欧州やオーストラリアなどの先進国株は米国株と高い相関がある一方、新興国株は比較的相関が低いことがわかります。中でも特に低い相関を示す米国株と中国本土株との関係について、詳しく見ていきます。

近年、米国株と中国本土株との相関が特に低下
右下のグラフは、米国株とそれぞれの株式について、2000年以降の各月における、12ヵ月の月次騰落率の相関を時系列で示したものです。近年の米中関係はというと、トランプ前政権下で米国の対中政策が大きく変わり、2018年以降、両国の対立が深刻化しました。そうした中、メディアなどでは米中デカップリングが大々的に取り上げられたものの、両株式の相関に大きな変化は見られませんでした。しかし、2020年のコロナ・ショックを機に両者の相関は急低下し、足元では歴史的に低いマイナスの水準となっています。つまり、コロナ・ショック以降、両国株式市場の分断が本格的に進んだ可能性があります。

米中の景気サイクルは異なる段階にある
その原因として考えられるのは、米中の景気サイクルが異なる段階にあることです。中国では厳しいゼロコロナ政策がとられたことに加え、米国ほど手厚い支援策が実施されませんでした。そのためコロナ禍からの回復時期がずれ、両市場のパフォーマンス分化につながったと考えられます。

足元の米国では、インフレの高止まりで利上げが続き、景気の先行きが懸念されている状況です。一方、中国では、ゼロコロナ政策の終了と共に経済の正常化が急がれ、政策支援が強化されているほか、金融緩和の余地も伺われます。米国の景気回復が見通せるようになるには、もう少し時間を要するとみられることから、両国の経済は引き続き異なる状況で進行し、米中株式の低相関も継続すると見込まれます。また、両国の間で、より構造的な分断が進んでいる可能性もあり、その場合は低相関がかなり長期化することも考えられます。こうしたことから、米国株中心のポートフォリオに加えるべき投資先として、中国本土株は検討に値するのではないでしょうか。

【図表】[左図]主要国・地域の主な株価指数の相関係数、[右図]米国株との相関係数の推移
  • 上記は過去のものであり、将来を約束するものではありません。
  • 信頼できると判断したデータをもとに日興アセットマネジメントが作成