2023、24年とも0.1ポイントの下方修正
IMF(国際通貨基金)は、4月11日に最新の世界経済見通しを発表し、2023、24年の世界のGDP成長率について、インフレ抑制に向けた利上げの影響を主な理由として、今年1月時点の見通しからそれぞれ0.1ポイント下方修正しました。具体的には、2023年は、新興国で経済の持ち直しが続くものの、欧州を中心とした先進国での成長鈍化などに伴ない、世界のGDP成長率は2.8%に落ち込むとされています。ただし、2024年の見通しは3.0%と、緩やかな加速が想定されています。

銀行の融資姿勢が厳しくなれば、成長の下振れも
米中堅銀行の相次ぐ破綻などに伴ない、今年3月には金融システム不安が拡がりましたが、市場の不安はいったん収まった模様です。ただし、IMFは、銀行の融資姿勢が厳しくなる場合、2023年の世界のGDP成長率が2.5%と、世界金融危機時の2009年やコロナ禍に見舞われた2020年を除くと、2001年以来の低水準にとどまる「妥当な代替シナリオ」も示しています。なお、同シナリオでの主要国・地域の成長率の下振れは、米国:0.4ポイント、米国を除く先進国:0.3ポイント、中国を除く新興国:0.2ポイント、中国:0.1ポイントとなっています。

また、確率は25%程度ながら、大規模な信用収縮の発生に加え、株安などによって新興国でも資金調達環境が厳しくなるような場合、2023年の世界のGDP成長率は2%未満にとどまると想定されています。なお、2%割れは1970年以降で5回しかありません。さらに、確率約15%の「深刻な下振れシナリオ」として、成長率が1%に落ち込むとのケースも想定されています。

中長期的な成長の鈍化は、想定内の出来事か
IMFは今回、中期的な成長として、5年先の世界のGDP成長予測を取り上げ、コメントしています。同予測は、2011年時点では4.6%でしたが、今回は3%にとどまっています。こうした鈍化は、中国や韓国など、以前は急成長していた国の成長鈍化を一部反映したものです。どの国も、成長・発展が進み、先進国との差が縮小するにつれて成長率は鈍化に向かうため、中長期の予測数値の鈍化自体は想定の範囲内とされています。ただし、それだけにとどまらず、パンデミックの傷跡、構造改革やイノベーションなどのペース鈍化、地政学的な分断化の進展に伴なう、貿易や直接投資の不振といった要因も影響しているかもしれないと、IMFは指摘しています。

【図表】[左図]IMFの世界経済見通し(実質GDP成長率)、[右図]世界の実質GDP成長率の推移
  • 上記は過去のものおよび予測であり、将来を約束するものではありません。