利上げを継続も、打ち止めの可能性を示唆
米国では、5月1日に再度、中堅銀行が経営破綻に至ったものの、FRB(連邦準備制度理事会)は、5月2~3日のFOMC(連邦公開市場委員会)で10会合連続となる利上げを決定し、政策金利(FFレートの誘導目標)を0.25ポイント引き上げ、5.00~5.25%としました。ただし、声明では、「追加措置が適切」との文言を削除し、今後は、経済・金融の情勢のほか、金融引き締めの累積的な効果や経済・物価に及ぼす影響の遅効性を考慮するとして、利上げ打ち止めの可能性を示唆しました。
与信引き締まりの影響は不透明
パウエルFRB議長は会見で、米国経済について、景気後退を回避し、ソフトランディング(軟着陸)する可能性が高く、例え景気後退に陥る場合でも、緩やかなものにとどまるとの見方を示しました。
また、銀行の状況については、概ね改善したと指摘したものの、過去1年での与信の引き締まりに続き、銀行が相次いで経営破綻に至ったことで、家計と企業への与信環境は一層引き締まったように見受けられるとして、経済活動や雇用、インフレにどの程度影響が及ぶかは不透明だと述べました。
インフレは高水準、労働市場はなお逼迫
インフレ率は、モノの分野においては著しく鈍化しているものの、サービス分野では高止まりしており、全体では目標の2%を大きく上回っています。また、賃金上昇率も、概ね鈍化傾向にはあるものの、タイトな労働需給を反映して高い伸びが続いており、サービス分野を中心とした高インフレの長期化につながる可能性があります。
こうした環境下、パウエル議長は会見で、インフレ率が依然、高すぎると指摘したほか、インフレ率の低下にはしばらく時間がかかるとして、年内の利下げの可能性はかなり低いと述べました。ただし、5日には市場予想より堅調な内容の雇用統計が発表されたものの、金利先物市場では引き続き、9月にも利下げが行なわれると想定されています。
追加利上げの有無や利下げに転じる時期を巡って、今後は、サービス分野を中心とした物価上昇率のほか、労働需給や賃金上昇率、さらに、銀行による与信の状況なども注目されます。
- 上記は過去のものおよび見通しであり、将来を約束するものではありません。