大統領選は5月28日の決選投票にもつれ込む
トルコでは5月14日、大統領選挙および議会選挙の投開票が行なわれました。2003年以降、首相や大統領として20年にわたり政権を率いてきたエルドアン氏の信任投票と目されている大統領選挙では、同氏と、主要野党6党が推すクルチダルオール氏(最大野党・共和人民党党首)との事実上の一騎打ちとなりましたが、いずれも過半数の票を得ることができず、同月28日に両者による決選投票が実施されることとなりました。これを受け、15日には、トルコの主要株価指数が6%超の下落となったほか、通貨リラも売られ、対米ドルで最安値を更新しました。

議会選は与党連合が制する
トルコでは、近年、高インフレが続いていることに加え、今年2月に大地震が発生し、初動対応の遅れや建築基準の運用の緩さなどから、犠牲者が4.5万人超におよんだことなどもあり、エルドアン大統領や与党AKP(公正発展党)への批判が強まっていました。

こうした中、主要野党は連合して、エルドアン氏が導入した実権型大統領制の廃止、議院内閣制の復活をめざしています。また、高インフレに見舞われているにもかかわらず、中央銀行に利下げを迫り、これを飲ませてきたエルドアン大統領に対し、野党連合は、中央銀行の独立性を重視し、金融政策を正常化させることなどもめざしています。なお、ウクライナ情勢を巡っては、ロシアのプーチン大統領と対話し、ウクライナの穀物輸出を仲介するなど、独自の外交で存在感を発揮してきたエルドアン大統領に対し、クルチダルオール氏は欧米寄りの路線を打ち出しています。

世論調査の支持率では、クルチダルオール氏がエルドアン氏をやや上回るケースもあったものの、14日の投票(暫定集計ベース)では、エルドアン氏の得票率が49%台だったのに対し、クルチダルオール氏は44%台にとどまりました。また、議会選挙では、与党連合が議席を減らしながらも、過半数を維持することとなりました。

トルコ・リラは中期的には今後も軟調傾向か
大統領選挙の決選投票については、エルドアン氏がやや有利との見方が優勢です。同氏が勝利する場合には、現行政策が続くとみられます。一方、クルチダルオール氏が巻き返しに成功し、勝利する場合でも、議会の主導権を与党連合が引き続き握るだけに、野党連合が掲げる目標の達成は困難とみられます。むしろ、大統領と議会のねじれ状態が生じることに伴ない、政治が混乱する可能性が懸念されています。また、トルコは、高インフレ以外にも、巨額の経常赤字や低水準の外貨準備といった弱みを抱えています。

こうしたことから、決選投票でクルチダルオール氏が勝利する場合でも、市場で好感され、リラが上昇するのは一時的で、中期的にはリラが軟調に推移する可能性が高いとみられています。

【図表】[左図]トルコ・リラの推移、[右図]トルコの物価および政策金利の推移
  • 信頼できると判断したデータをもとに日興アセットマネジメントが作成
  • 上記は過去のものであり、将来を約束するものではありません。