世界の半導体需要が足元で減速しています。コロナ禍において堅調だったPC特需が剥落した影響もあり、2023年は4年ぶりのマイナス成長が見込まれ、世界的な景気減速による影響も懸念されます。一方、国・地域レベルで半導体の供給力強化に向けた動きが進んでおり、日本では海外の主要半導体関連企業による投資が相次ぐなど、今後の動向が注目されます。

■コロナ禍で加速したDXの流れ
半導体は、電流のコントロールや計算、情報記憶から省エネに至るまで幅広い機能を持ち、「電子機器の頭脳部分」として電気製品に欠かせない部品です。

需要別の内訳では、PCやスマートフォン向けが中心となっており、特に近年は、コロナ禍でのリモートワークやEC(電子商取引)需要の急増などを背景に、大きな伸びを見せました。加えて、DX(デジタル・トランスフォーメーション)の加速に伴なうデータセンター向けや、人手不足対策としてのロボットなど産業向けの需要も増加しています。

スマートフォンが、手のひらサイズで電話以外にも様々な機能を搭載できた例に代表されるように、半導体の進化は、多くの技術に変革を及ぼしてきました。最近では、AI(人工知能)向け半導体が注目を集めるほか、世界的な気候変動対策に向けてGX(グリーン・トランスフォーメーション)の取り組みが急務となるなか、EV(電気自動車)や省エネ対応でも半導体は不可欠と考えられており、活用の場は大きく拡がっています。

■異次元ともされる各国・地域による支援策
こうしたなか、政策面での後押しの動きも進んでいます。コロナ禍やウクライナ情勢の緊迫化などによる供給不足から、製造業などへの影響が生じたことを契機に、社会インフラともいえる半導体の製造を他国に依存するリスクが再認識されました。そのため、米国や欧州などでは、安定供給に向けた半導体メーカーの国内誘致や囲い込みなど、民間企業も交えて巨額の支援策を打ち出しています。

日本政府も、2021年6月に「半導体・デジタル産業戦略」を策定しました。そこでは、半導体供給網の強靭化、デジタル化・グリーン化への対応は、これまで以上に大きく現実的な問題との認識を示しており、国内での半導体関連企業の合計売上高を、2030年に15兆円超とすることをめざしています。

■社会インフラとしてますます重要な存在に
このように半導体は、社会インフラとしての重要性から、各国・地域が競って支援に取り組んでいる状況です。政策支援の動きや重要性などの観点から、半導体は活用分野を拡げながら、中長期的な成長が期待されます。

【図表】[左図]自動車やデータセンター向け中心に、伸びが加速、[右図]各国・地域とも、半導体関連の取り組みを強化
  • 経済産業省などの情報をもとに日興アセットマネジメントが作成
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