5月の金融市場では、米国で地方銀行に対する経営不安がくすぶる中、銀行の融資基準の厳格化が経済活動を下押しするとの懸念が拡がりました。中旬以降も、米欧での利上げ長期化観測や、米連邦政府の債務上限問題などが重石となり、世界の株式相場は上値の重い展開となりました。その後、月末にバイデン米大統領と野党・共和党のマッカーシー下院議長が連邦債務上限問題への対応で基本合意に達すると、米国債のデフォルト懸念が後退し、市場心理が改善しました。日本の株式市場では、円安・米ドル高傾向が輸出関連株の追い風となったほか、相対的な投資環境の良さが海外投資家に選好され、日経平均株価は一時、約33年ぶりの高値水準となりました。

米国債の格下げリスクがくすぶる
米国の債務上限問題を巡り、5月31日夜(日本時間6月1日午前)にも、共和党が多数派を占める下院で法案が採決される見通しとなりました。しかし、財政悪化に伴なう米国債の格下げリスクは依然としてくすぶり続けています。2011年に債務上限が問題化した際には、期限ぎりぎりで法案が成立したものの、その後大手格付会社によって米国債が格下げされ、世界で株安が進行しました。今回も一部の格付会社が米国の信用格付の見通しを「ネガティブ」としており、市場では警戒感が拡がっています。

6月のFOMCで利上げが継続されるかが焦点に
6月13-14日のFOMC(米連邦公開市場委員会)では、利上げの有無が焦点となります。インフレ率の鈍化ペースが鈍いことを受けて、米FRB(連邦準備制度理事会)高官の発言は、利上げの継続に前向きなものが目立ちます。そうした中、月初に発表される雇用やインフレなどの経済指標に高い関心が集まっています。一方で、銀行の融資基準の厳格化が実体経済に及ぼす影響を見極めるため、6月のFOMCでは利上げが見送られるものの、7月以降に再開される可能性があるとの見方が拡がっています。

ユーロ圏ではインフレの高止まりが続く
欧州では、ウクライナ危機に端を発した資源高が落ち着きを見せる反面、食品やサービスの価格上昇を受け、インフレ率が高止まりしています。5月の理事会で7会合連続となる利上げを決定したECB(欧州中央銀行)は、上げ幅を前回までの0.5ポイントから0.25ポイントに縮めたものの、これまで通りインフレの抑制を重視し、利上げを継続することを示唆しました。今後のECBの金融政策を占う上で、引き続きインフレ率の動向が注視されます。

日本株の更なる支援材料となるか
好調が続く日本の株式市場では、企業の成長期待や円安進行などが、引き続き株価の追い風になるとみられます。そうした中、東京証券取引所による低PBR(株価純資産倍率)企業への是正要請に対し、6月以降に企業側から提出されるコーポレートガバナンス(企業統治)への企業の対策が、実効性の高い内容になれば、中長期的な株価の支援材料になると考えられます。

【図表】6月の注目される金融政策および政治・経済イベント
  • 信頼できると判断した情報をもとに日興アセットマネジメントが作成。スケジュールは予告なしに変更される可能性があります。
  • 上記は過去のものおよび予定であり、将来を約束するものではありません。