コロナ禍以降、欧米を中心に高インフレが継続しているほか、日本でも輸入物価の上昇や、コロナ後の経済正常化に伴なう需要の増加などからインフレが進んでいます。5月に発表された4月のCPI(消費者物価指数)では、天候の影響を受けやすい生鮮食品を除いたコアCPIが前年同月比+3.4%となったように、昨年4月以降、日銀の「年2%」の物価上昇率目標を上回る水準が継続しています。

インフレは長期化する可能性も
足もとの国際商品市況の落ち着きなどにより輸入物価の上昇も減速しつつあることから、日銀は、インフレが秋以降には一旦落ち着くとみています。しかし、2021年頃から大きく上昇を続ける企業物価指数(企業間で取引される財の価格変動を測る指数)が依然高水準であることに加え、サービス価格も上昇していることなどから、インフレは長期化する可能性があります。

インフレは現金資産の実質的価値を目減りさせる
インフレとは様々な商品やサービスの価格が上昇することですが、見方を変えると、預貯金などの現金資産の実質的な価値が目減りすることを意味します。仮にインフレ率が年2%で推移した場合、計算上、現在の100万円の価値が20年後には約3割減ることになります。預金金利などがインフレ率を上回れば、価値の目減りを回避できますが、現在の預金金利はゼロに近い水準にあり、銀行預金では目減りの回避が難しい状況です。そのため、インフレ環境下においては、「預貯金」のみで資産を保有するのではなく、金融資産(株式、債券等)などへ投資を行ない、資産の目減りを防ぐことも必要と考えられます。

自分に合った投資を選び、制度を活用する
ひとことで「投資」と言っても、その選択肢は多岐にわたるため、まずは自分に合った「投資」が何かを整理する必要があります。現在の生活や将来の予定に影響が出ないよう、当面使う予定がないお金で投資を行ない、自身の目標とするリターンや、許容できるリスク、運用期間などを定め、それに合った「投資」を検討することが望ましいとされています。また、政府は、個人の投資による資産づくりの促進を様々な形で後押ししています。2014年に開始したNISA(少額投資非課税制度)はその一つですが、2024年からは、年間投資枠の大幅拡大や、非課税保有期間の無期限化など、現行制度を拡充した新NISAを開始する予定となっており、このような制度の活用も効率的な資産づくりを行なう上で重要となります。

単に利益を得る目的だけではなく、今ある資産を守るという観点においても、中長期的な資産運用は重要です。インフレを機に、自身に必要な資産運用について是非検討してみてはいかがでしょうか。

【図表】[左図]日本の消費者物価指数と企業物価指数、[右図]インフレ率と現金価値の変化【イメージ】