利上げ見送りも、年内2回の追加利上げを示唆
米FRB(連邦準備制度理事会)は6月13~14日のFOMC(連邦公開市場委員会)で、政策金利(FFレートの誘導目標)を5.00~5.25%で据え置くことを決定しました。据え置きは2022年3月の実質ゼロ金利の解除以降で初めてで、11会合ぶりのことです。ただし、FOMC参加者の見通し(中央値)では、従来予想を上回る堅調な経済と、インフレ率の緩慢な鈍化を想定し、今年末の政策金利の予想が5.6%に引き上がりました。これは、0.25ポイントの利上げが年内に2回実施される可能性を示唆するものです。

次回7月のFOMCでの判断はデータ次第
FRBのパウエル議長は会合後の会見で、インフレ圧力は高い状態が続いており、2%の物価目標に戻すプロセスにはまだ長い道のりがあるとの見解を示しました。また、FOMC参加者のほぼ全員が、インフレを鈍化させるために、年内に一定の追加利上げを行なうことが適切と考えていると説明しました。ただし、市場で利上げが有力視されている次回7月の会合での政策判断の行方については、今後のデータ次第で変わるとして、明言を避けました。

市場では、今月は利上げを見送り、7月に0.25ポイントの追加利上げをもって、利上げ局面は終了との見方が優勢でした。しかし、今回の会合であと2回の追加利上げの可能性が示唆されたことなどを受け、7月の利上げ観測が強まったほか、年内の利下げ観測は後退しました。

インフレは高水準、労働市場はなお逼迫
インフレ率は、モノの分野においては著しく鈍化しているものの、サービス分野では高止まりしており、全体では目標の2%を大きく上回っています。また、賃金上昇率も、概ね鈍化傾向にはあるものの、タイトな労働需給を反映して高い伸びが続いており、サービス分野を中心とした高インフレの長期化につながる可能性があります。

追加利上げの有無や利下げに転じる時期を巡って、今後は、サービス分野を中心とした物価上昇率のほか、労働需給や賃金上昇率、さらに、銀行による商業用不動産向け等の与信の状況なども注目されます。

【図表】[上図]23年のFOMC開催予定(下段:議事要旨の公表日)、[下図]23年6月のFOMC参加者の見通し(中央値)
【図表】[左図]米国の消費者物価上昇率(前年同月比)と金利の推移、[右図]米労働市場の主要指標の推移
  • 米労働統計局、全米経済研究所(NBER)、FRBなどの信頼できると判断したデータをもとに日興アセットマネジメントが作成
  • 上記は過去のものおよび見通しであり、将来を約束するものではありません。