株式市場の今後を見通す上で、景気の先行きは欠かせない材料ですが、数ヵ月先の景気の行方を示唆する指標の一つとして工作機械受注(日本工作機械工業会発表)があります。

景気の先行指標とされる工作機械受注
工作機械とは、切削や研削などにより機械部品を効率的に加工するための機械のことを言います。あらゆる機械や部品などを作る基となることから、「機械を作る機械」「マザーマシン(母なる機械)」ともいわれ、ものづくりを支えています。そのため、企業の設備投資動向の先行きを示唆する指標として、金融市場では特に「機械」や「資本財」などのセクターで注目されています。

また、スマートフォンなどの消費動向を敏感に反映するといわれることや、各国・地域ごとの受注内容の状況が示されることから、世界の製造業トレンドの先行指標としても注目されます。

過去30年の長期推移を見ると、好不況の波を受けていくつかのサイクルが形成されています。今月20日に発表された5月の確報値では、金利高の影響で北米向けが落ち込むなど、足元の受注は減速傾向となっていますが、過去のサイクルや中長期的な視点からは、底打ちが視野に入ってきていると期待されます。

底打ち間近?需要拡大の材料は出揃う
長期推移の中でピークからピークを一つのサイクルとして見ると、過去30年で6回のサイクルがあり、この6回の平均減少期間は20ヵ月、平均増加期間は29.7ヵ月と、底打ち後は息の長い回復となりました。特に近年は、新興国の経済発展に伴なう設備投資拡大や世界的な自動化ニーズなど、構造的な需要拡大要因も下支えし、全体的な需要の押上げに繋がっていると考えられます。

そして、現在のサイクルは、2022年3月を起点に6月で16ヵ月目に突入しています。経験則だけでなく、製造業を中心に積極的な投資姿勢がみられるなどの明るい材料もあり、底打ちへの期待が高まります。また、中長期的には、世界的な脱炭素への取り組みや人手不足解消に向けた自動化の進展、サプライチェーンの再構築の動きなど、世界的な需要拡大の材料は揃っており、底打ち後の持続的な回復も期待されます。製造業の回復トレンドに明るさが増せば、株式市場にも追い風になると期待され、今後の動向が注目されます。

【図表】日本の工作機械受注総額の推移(1993年1月~2023年5月)
  • 上記は過去のものであり、将来を約束するものではありません。
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  • 一般社団法人 日本工作機械工業会/ラザード社、内閣府