中国の中央銀行である中国人民銀行は今年6月、10ヵ月ぶりに金利を相次いで引き下げました。また、7月14日には、人民元を安定させ、急激な変動を防ぐ方針に加え、経済が直面する課題に対処するため、預金準備率や公開市場操作(オペ)などの様々な金融政策手段を包括的に活用する方針を示しました。そこで、この機会に、同行の金融政策の枠組みの概略を以下にまとめます。

金融政策の目標:通貨価値の安定を維持し、経済成長を促進すること
中国人民銀行は、国務院(政府)の指導の下、金融政策を執行すると定められています。つまり、政府の一部門であり、完全に独立した存在というわけではありません。

同行には、総裁・副総裁に加え、政府関連部門の高官や銀行業協会代表、政府系エコノミストにより構成される金融政策委員会が設けられています。同委員会は、金融政策の決定権限を有していませんが、諮問機関として、重要な役割を発揮することを求められており、四半期毎に開く会合の報告書の内容が市場で注目されています。

また、金融政策の目標は、通貨価値の安定を維持し、それにより経済成長を促進することと定められています。こうした目標の下、中国人民銀行は、物価の安定、雇用の促進、国際収支の均衡などにも目を配っています。

多岐にわたる政策手段を活用
中国人民銀行の政策手段においては、市場を通じて市中の金融機関と行なう取引であるオペへの依存度が徐々に高まっています。具体的には、短期金利については、原則、毎日実施する7日物リバースレポ・オペを、また、中期金利については、毎月15日頃に行なうMLF(中期貸出ファシリティ)オペを重視しています。

なお、MLFの金利は、LPR(最優遇貸出金利)を算出する基礎となることなどから、その動向が注目されています。LPRは、毎月20日頃に発表され、1年物は優良企業への貸出金利の指標、5年物は住宅ローン金利の指標とされています。

また、中国人民銀行は、市中で流通する資金量を調節する手段として、市中金融機関から強制的に預かるお金の比率を示す預金準備率の操作も行なっています。さらに、市中金融機関に対し、融資の促進や抑制などを直接働きかける、窓口指導のような伝統的手段も併用しています。

更なる金融緩和も見込まれているが
市場では、景気てこ入れに向け、中国人民銀行が更なる金融緩和を行なうとの見方が有力です。一方で、企業・家計は財務の改善や借金の返済に注力しており、足元の借入需要は低いとみられています。こうしたことなどから、財政出動や規制緩和など、政府の景気刺激策を求める声も強まっています。

【図表】[左図]中国の主要金利と預金準備率の推移、[右図]中国における金利波及効果の概略
  • 中国人民銀行などの信頼できると判断したデータをもとに日興アセットマネジメントが作成
  • 上記は過去のものであり、将来を約束するものではありません。