2023年の見通しは0.2ポイントの上方修正
IMF(国際通貨基金)は7月25日に最新の世界経済見通しを発表し、2023年の世界のGDP成長率について、同年1-3月期の先進国でのサービス消費の堅調を主因として、今年4月時点の見通しから0.2ポイント上方修正しました。ただし、先進国を中心とした景気鈍化を想定し、向こう2年の世界の成長率はいずれも3.0%と、2000年~2019年の平均の3.8%や、2022年の3.5%を下回ると見込んでいます。なお、新興国については、全体としては安定成長が見込まれているものの、地域によって状況はマチマチとされています。

世界経済は2023年1-3月期に底堅く推移
2023年の見通しのうち、先進国では、消費の伸びが堅調だった米国や、サービスと観光が堅調だった、イタリアおよびスペインが上方修正された一方、製造業が低迷したドイツは下方修正されました。日本の場合は、コロナ禍で抑えられていた需要の持ち直しを背景に、上方修正されました。

新興国では、インドが投資拡大、ロシアが大規模景気対策、ブラジルが農業生産の増加とサービス業への波及効果、メキシコがサービス業の回復や底堅い米国の需要などから、上方修正されました。

なお、WHO(世界保健機関)が新型コロナウイルスに関する緊急事態宣言を今年5月に解除したほか、サプライチェーン(供給網)についても、コロナ禍前の状況にほぼ戻ったとされています。しかし、金融引き締めなどの影響により、先進国の製造業を中心に、経済活動が勢いを失いつつある兆しが強まっています。また、世界のインフレは2024年にかけて鈍化する見通しながら、全体として、物価目標がある国の内、2023年は96%で、2024年は89%で、インフレ率が目標を上回ったまま推移すると見込まれています。

インフレ長期化や中国の回復減速がリスク要因
中国については、不動産不況の影響で予想を下回った投資を、予想以上に好調だった純輸出が一部補ったとして、今回、見通しに変更はありませんでした。しかし、世界経済の減速が予想される中、純輸出の寄与度は今後、低下する可能性があります。IMFは、世界経済見通しの下振れ要因として、高インフレや金融引き締めの長期化、新興国の債務問題、地政学や気象面でのショックなどに加え、中国の景気回復の減速を挙げています。

また、IMFのチーフエコノミストは、世界経済の5年後の成長率について、3%付近かそれをやや上回る程度にとどまるとの見解を示しています。

【図表】[左図]IMFの世界経済見通し(実質GDP成長率)、[右図]世界の実質GDP成長率の推移
  • 上記は過去のものおよび予測であり、将来を約束するものではありません。