8月の金融市場は、上旬に大手格付会社によって米国の発行体格付けが1段階引き下げられたことや、米長期金利の上昇を受け、ハイテク株を中心に、株価は下落基調となりました。中旬も米長期金利の上昇が続きましたが、月末にかけては、米経済指標が下振れしたことなどから、金利が低下、株価は持ち直しに転じました。また、中国では、大手不動産会社を巡る問題などから、景気や不動産セクターへの懸念が強まりました。

9月の米利上げは見送りとの観測が優勢
今後も引き続き、市場では、米金融政策の行方が注視されます。なお、8月下旬に開かれた経済シンポジウム「ジャクソンホール会議」において、パウエル米FRB(連邦準備制度理事会)議長が演説を行ない、「依然としてインフレ率は高すぎる」との見解を示し、「経済データ次第で追加利上げもあり得る」と発言しました。市場では、今回の発言は追加利上げを強く求める内容ではなく、金融政策の新たな方向性を示すものではない、との受け止めが拡がったことから、足元では、19、20日に開かれるFOMC(連邦公開市場委員会)において利上げが見送られるとの観測が優勢です。8月末には米経済の軟化を示す経済指標が発表されたことで、今後の政策金利の行方を見極めようと、引き続き経済指標の内容などが注目されます。

日本の成長戦略や金融政策に注目
日本では、物価上昇による経済の下振れリスクを抱えるなかで、9月に内閣改造が実施される見通しです。改造後の新内閣において、賃上げなどの「人への投資」や先端分野での設備投資を促す政策など、成長力強化のための構造改革が進められる見込みです。

また、日銀がYCC(イールド・カーブ・コントロール、長短金利操作)の運用柔軟化を行なったことで、長期金利はじりじりと上昇しているものの、為替は円安・米ドル高に振れる傾向にあります。国内物価の上昇基調が続くなか、日銀が21、22日の会合でどのような金融政策をとるのかに注目が集まっています。

中国の今後の景気支援策に注目
中国では、大手不動産会社の経営不安や脆弱な経済指標などによる景気の先行き懸念から、年初より株安、人民元安が続いています。そうしたなか、8月末に、中国当局が15年ぶりに株式取引にかかる印紙税の引き下げなど、国内の株式市場支援に向けた政策を発表したことが好感され、株価は反発しました。今後については、市場支援策に続く強力な景気対策の導入や不動産問題への対応など、景気浮揚に取り組む当局の姿勢が強化されるのかが注目されます。

【図表】9月の注目される金融政策および政治・経済イベント
  • 信頼できると判断した情報をもとに日興アセットマネジメントが作成。スケジュールは予告なしに変更される可能性があります。
  • 上記は過去のものおよび予定であり、将来を約束するものではありません。