政策金利は据え置きも、全体の印象はタカ派的
米FRB(連邦準備制度理事会)は9月19〜20日のFOMC(連邦公開市場委員会)で、市場予想どおり、政策金利(FFレートの誘導目標)を5.25~5.50%で据え置くことを決定しました。ただし、FOMC参加者の見通し(中央値)では、従来予想より堅調な経済および労働市場と、インフレの緩慢な鈍化を想定し、今年末の政策金利予想が5.6%で据え置かれ、年内にあと1回の追加利上げが示唆されたほか、2024、25年末の水準がともに前回の見通しから0.5ポイント上方修正されました。

政策金利を高水準でより長く維持する姿勢が示されたことを受け、今回のFOMCは金融引き締めに前向きなタカ派色が強かったと受け止められ、国債利回りが上昇し、株式相場は下落しました。

サービス分野でのさらなるインフレ鈍化が不可欠
FRBのパウエル議長はFOMC後の会見で、「適切であれば追加利上げに動く用意がある」「インフレが目標に向かって持続的に低下していると確信できるまで、政策金利を景気抑制的な水準に維持する」と述べ、経済データや見通し、リスクを見極めながら、慎重に政策を進める考えを示しました。

インフレ率は、モノの分野で大きく鈍化しただけでなく、サービス分野でも鈍化傾向にあるものの、水準としては依然、かなり高い状況です。また、労働参加率が伸び、人手不足は緩和しつつあるものの、労働市場がなお逼迫していることなどから、賃金上昇率は4%台前半で高止まりしています。

なお、パウエル議長はリスク要因として、UAW(全米自動車労働組合)によるストライキや、政府機関閉鎖の可能性、コロナ禍を受けて停止されていた、学生ローンの返済の10月からの再開、エネルギー価格の高止まりなどを挙げました。

政策判断はますますデータ次第に
先物市場では、年内にあと1回利上げが行なわれるとの見方が、据え置きとの見方をやや上回っています。ただし、FRBの政策判断は今後、ますますデータ次第で変わる可能性があり、サービス分野を中心とした物価上昇率のほか、労働需給や賃金上昇率など、幅広いデータが注目されます。

【図表】[上図]来年前半までのFOMC開催予定(下段:議事要旨公表日)、[下図]23年9月のFOMC参加者の見通し(中央値)
【図表】[左図]米国の消費者物価上昇率(前年同月比)と金利の推移、[右図]米労働市場の主要指標の推移
  • 物価は23年8月まで、金利・利回りの直近データは9月20日時点
  • 米労働統計局、全米経済研究所(NBER)、FRBなどの信頼できると判断したデータをもとに日興アセットマネジメントが作成
  • 上記は過去のものおよび見通しであり、将来を約束するものではありません。