景気回復が遅れる中で気を吐く自動車市場
景気回復の遅れが懸念される中国にあって、自動車市場の好調が注目を集めています。年初には購入支援策の終了を受けて販売が落ち込んだものの、1-8月の累計販売台数は前年比で8%増加しており、下期もこの勢いが続くとみられています。

中国自動車業界の好調を牽引しているのが、新エネルギー車*(以下、新エネ車)です。中国では、新エネ車が国内販売台数の約30%(23年1-8月累計)を占めており、これは日本の約4%(23年上期)、米国の約7%(22年)と比較しても驚異的な数字と言えます。EV(電気自動車)など新エネ車の販売は世界中で大きく伸びていますが、中国における拡大の勢いには目を見張るものがあります。
中国政府はEV、プラグインハイブリッド車、燃料電池車を新エネ車として区分。

中国新エネ車メーカーの強みと成長性
新エネ車市場での世界的な主導権獲得をめざし、中国政府は早くから多面的な政策支援を実施してきました。その結果、中国の自動車業界は電池材料から完成車に至る一気通貫のバリューチェーンを構築し、高い競争力を獲得しました。

中国政府は9月1日、「自動車産業の着実な発展に関する作業方案」を発表し、自動車産業の発展を促す様々な支援策とともに、23年の自動車販売において、新エネ車の販売を前年実績よりも大幅に増加させる目標(約900万台、前年比約30%増)を打ち出しました。これは年初に中国自動車工業協会が発表した予想値(850万台)を上回る数字であり、政府の期待の大きさが伺えます。

政府の思惑を受け、中国メーカーはガソリン車から新エネ車へのシフトを強めています。国内最大規模のBYDは昨年3月から新エネ車の生産に特化しているほか、業界大手の上海汽車は昨年末、25年には販売台数の40%を新エネ車にすると発表しました。こうした動きに対し、外資系メーカーの対応は後手に回っており、世界最大を誇る中国の新エネ車市場において、中国メーカーの販売シェアは約8割(22年)を占める状況となっています。

中国の自動車輸出は世界首位へと躍進
国内での販売増に加え、世界でも中国勢の躍進が続いています。中国の自動車輸出台数は昨年ドイツを抜いた後、今年上期には日本を抜いて世界首位となりました。中国の輸出が4ヵ月連続で前年比マイナスとなる中、自動車輸出は大きく拡大しており、中でも輸出台数の約25%(23年1-8月)を新エネ車が占めています。ガソリン車の大半がメキシコやロシア向けであるのに対し、新エネ車の輸出先は、需要が拡大する欧州各国への再輸出先となるベルギーや、英国などが目立ちます。

世界で中国勢の影響力が一段と増す可能性も
中国の自動車メーカーには、ブランド戦略の壁や貿易問題といった懸念材料も少なくありません。しかし、強大なサプライチェーンや圧倒的な価格競争力などを背景に、中国の新エネ車市場が想定以上の勢いで拡大していることは事実です。今後、ガソリン車から新エネ車へのシフトが世界中で加速すると予想される中、中国メーカーの影響力が一段と強まる可能性が考えられます。

【図表】[左図]中国の新エネ車の販売台数およびシェア、[右図]中国の自動車輸出台数
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