経済成長著しいアセアン(東南アジア諸国連合)ですが、足元ではまだ加盟国の大半が発展途上にあります。今後も、主な経済の成長要因である豊富な人口と若年層が多い人口構成、消費の高度化やデジタル化の進展などをエンジンとして、高い成長が続くと期待されます。

要因①:豊富な人口と魅力的な人口構成
アセアンの人口は約6.7億人(2022年)と、世界人口の約9%を占めています。これは、中国やインドに次ぐ水準で、EU(欧州連合)の約4.4億人を上回ります。

加えて、アセアンは若い人が多くピラミッド型に近い人口構成をした「人口ボーナス期」(A:生産年齢(15~64歳)の人口比率が上昇を続けている、もしくは、B:生産年齢人口がその他の人口の2倍以上ある状態)にあります。一般的に人口ボーナス期は、豊富な労働力に加えて、教育や医療、年金などの社会福祉の負担が国民所得比で低いことなどから、経済政策に予算を振り向けやすくなり、経済が活性化する傾向にあります。実際、日本が上述のABを概ね満たす人口ボーナス期にあった1960年代から90年代前半、日本のGDP成長率(年率)は平均5%超の高い水準を誇り、株価も大きく上昇しました。アセアンは、2010年代以降、地域全体でAB両方の条件を満たしており、今まさに人口ボーナス期の真っただ中にあります。

要因②:消費の高度化
アセアンの消費市場は、近年の経済成長の恩恵などもあり、拡大基調となっています。今後の経済成長などに伴なう、さらなる所得の向上により、消費の拡大が期待されるほか、生活必需品から、レジャーやヘルスケア、高付加価値の製品・サービスなどへと、消費が高度化し、同地域の消費市場が活性化すると考えられます。

一方、一人当たりの生活水準とも言える一人当たり名目GDP(下グラフ)を見ると、アセアンの多くの国は、いまだ低い水準にあります。2022年時点では、日本の高度経済成長期のころの水準にあり、今後の大きな伸びが期待されます。

要因③:デジタル化の進展
アセアンでは、テクノロジーに精通した若年層の多さやスマートフォンの普及、5G(第5世代移動通信システム)ネットワークの展開に加え、電子商取引など消費のデジタル化がコロナ禍を機に加速したことなども追い風となり、インターネット市場が急速に成長しています。東南アジア全体のデジタル経済の市場規模は、2030年に1兆米ドルに達するとの試算もあり、同地域のデジタル経済の成長に注目が集まっています。

こうした要因から、アセアンは世界の新たな一大消費市場への成長が期待されます。

【図表】アセアン諸国の大半はいまだ発展途上にある
  • 上記は過去のものおよび予想であり、将来を約束するものではありません。