9月の米雇用者数は上振れ、賃金の伸びは鈍化
米国では、8月の求人件数が4ヵ月ぶりに増加したのに続き、10月6日には9月の雇用者数が発表され、前月比+33.6万人と1月以来の大幅増となったほか、7、8月の実績が上方修正されました。

労働市場の堅調さが示されたことを受け、10年国債利回りは6日に一時4.88%台と、2007年8月以来の高水準となりました。ただし、9月の平均時給が前年同月比+4.2%と、前月から0.1ポイント低下したことなどから、利回りは引けにかけて上げ幅を縮めたほか、雇用者数の上振れを受けて売り先行となった株式市場でも、ハイテク株を中心に買いが入り、株式相場は上昇に転じて引けました。

サービス分野でのさらなるインフレ鈍化が不可欠
米国のインフレ率は、モノの分野で大きく鈍化しただけでなく、サービス分野でも鈍化傾向にあるものの、水準としては依然、かなり高い状況です。また、労働参加率が伸び、人手不足は緩和方向にある模様ながら、労働市場がなお逼迫していることなどから、賃金上昇率は4%台前半と、高止まりしており、サービス分野を中心とした高インフレの長期化につながる可能性があります。

今回の雇用統計の発表を受け、市場では年内の追加利上げ観測がやや強まったものの、FRB(連邦準備制度理事会)の政策判断は今後、ますますデータ次第で変わる可能性があり、サービス分野を中心とした物価上昇率のほか、労働需給や賃金上昇率など、幅広いデータが注目されます。

上昇圧力が強まる長期金利の行方にも要注目
足元で上昇する米長期金利について、財政悪化や政治の混乱に伴なう、米国の信認低下の影響が大きいとする見方も拡がりつつあります。

米国では、財政悪化に伴なって国債が増発されているほか、10月に始まった2024会計年度の連邦予算が未成立のままです。9月末につなぎ予算が成立し、政府機関の閉鎖はいったん回避されているものの、同予算を巡る野党・共和党での内紛により、下院議長が解任されるに至っています。また、つなぎ予算の期限の11月17日までに本予算が成立するかどうか、予断を許さない状況です。

長期金利が、政策金利の引き上げ観測などを反映して上昇する限りにおいては、利上げに代わる効果を期待でき、FRBもそれを考慮すると考えられます。しかし、米国の信認低下が拡がるのに伴なって長期金利が大きく上昇するような場合には、景気や株式相場などに悪影響が及ぶと懸念されることから、今後の動向が注目されます。

【図表】[上図]年内のFOMC(連邦公開市場委員会)開催予定、[下図]23年9月のFOMC参加者の見通し(中央値)
【図表】[左図]米国の消費者物価上昇率(前年同月比)と金利の推移、[右図]米労働市場の主要指標の推移
  • 上記は過去のものおよび見通しであり、将来を約束するものではありません。