2024年の見通しは0.1ポイント下方修正
IMF(国際通貨基金)は10月10日に最新の世界経済見通しを発表し、2023年の世界のGDP成長率を前年比+3.0%で据え置いたものの、2024年については、今年7月時点の見通しから0.1ポイント下方修正し、+2.9%としました。こうした見通しは、世界景気が鈍化するものの、停滞は免れ、軟着陸に成功することを示唆するものです。ただし、5年後の2028年の見通しも+3.1%にとどまるなど、2000年~2019年の平均の+3.8%を下回る状況が続くとみられています。

米国や日本の見通しは上方修正、中国の不動産危機は世界経済にとって重要なリスク
個別の国・地域のGDP成長率見通しについては、先進国では、最も高い回復力を示している米国が、堅調な設備投資や消費の拡大などを理由に、2023、24年とも上方修正されたのが目立ちます。日本についても、訪日外国人観光客や自動車輸出の回復などを背景に、2023年が上方修正されました。

一方、ユーロ圏については、ロシアによるウクライナ侵攻の長期化に伴ない、エネルギー価格が高騰するなど、インフレ率が高止まりすると想定されることなどから、両年とも下方修正となりました。特にドイツについては、金利上昇の影響や冴えない外需などを背景に、2023年後半に緩やかな景気後退に陥ると見込まれています。

新興国については、多くの国が予想外の回復力を示す中、中国は例外となり、不動産危機や消費者心理の悪化などを理由に、2023、24年とも下方修正となりました。IMFは、不動産危機がさらに深まる可能性があるとして、同国を世界経済にとって重要なリスクと指摘しています。そして、経営難に陥っている不動産開発業者を速やかに再編することや、金融の安定維持、地方財政ひっ迫への対処の必要性にも言及しています。

燃料価格急騰や想定以上の利上げもリスク要因
なお、インフレ率については、世界的に鈍化傾向にあるものの、IMFは、2023、24年とも見通しを上方修正したほか、大半の国・地域で2025年まで中央銀行の目標を上回るとして、引き締め的な政策を堅持するよう促しました。

IMFはリスク要因として、中国の不動産危機の悪化のほか、気候や地政学的な問題に伴なう食料・エネルギー価格の急騰、インフレ圧力の高止まりを受けての想定以上の利上げなどを挙げています。

【図表】[左図]IMFの世界経済見通し(実質GDP成長率)、[右図]世界の実質GDP成長率の推移
  • 上記は過去のものおよび予測であり、将来を約束するものではありません。