アセアンとは東南アジアの10ヵ国から成る経済共同体です。それぞれに異なる特徴を持つアセアンの主要加盟国について、ご紹介します。

インドネシア
インドネシアは、世界4位の人口、14,000以上の島々からなる国土(日本の約5倍)、2022年時点の名目GDPは約1.3兆米ドル(日本の3割程度)と、いずれも域内最大の規模を誇ります。国民の大多数をイスラム教徒が占めるものの、信仰は自由で、様々な民族や文化、宗教を尊重する、「多様性の中の統一」を特徴としています。首都はジャカルタですが、人口の一極集中と交通渋滞の緩和、自然災害への対応などを目的に、2024年以降をめどに、同国のほぼ中央、カリマンタン島に位置する「ヌサンタラ」への首都移転計画が進められています。

同国は原油などに恵まれた資源国という側面も持ちます。中でも、EV(電気自動車)バッテリーなどの普及で需要が高まるニッケルにおいては、世界最大級の埋蔵量・生産量を誇っています。同国政府は、産業の高付加価値化をめざし、国内で採れた鉱物資源の国内精製・精錬を義務づけています。そして、ニッケルの埋蔵量が豊富という強みを活かし、EVバッテリーサプライチェーンの拠点化をめざす動きを加速しています。

シンガポール
中国、マレー、インド、ヨーロッパなど多様な文化や言語、宗教が調和し、独自の文化を形成してきた都市国家です。国土面積は東京23区程度、人口はおよそ560万人と兵庫県ほどの規模ですが、高度な製造業、金融業、情報通信業、バイオテクノロジー産業などを擁することから、一人当たりの名目GDPは約83,000米ドルと、日本(同約34,000米ドル)の2倍超の水準にあります。

さらに、同国は、世界有数の資金調達環境が備わっていることや高度な理工系教育を受けた人材が豊富なことなどを背景に、グローバルに活躍する次世代スタートアップが次々と生まれる、イノベーション大国でもあります。また、整備されたインフラやビジネス環境、世界市場への良好なアクセス、税制優遇措置などにより、世界の有力企業の誘致に成功しており、世界有数の競争力を誇る、グローバルビジネスの中心地のひとつとなっています。

タイ
タイは、人口約7,000万人と、アセアンの中では中規模の国ですが、経済規模でみると、名目GDPが4,954億米ドルと、域内ではインドネシアに次ぐ規模を誇ります(2022年時点)。

同国は、EVサプライチェーン構築や半導体産業の誘致に積極的に取り組んでいます。同国政府は、2030年までに国内の自動車生産に占めるEVの割合を3割に引き上げ、アセアンにおけるEV生産ハブとなることをめざしています。この達成のため、EVやバッテリーの生産、充電設備の整備などに向けた補助金プログラムや税優遇策などを導入しています。これにより、タイのEV市場には中国EVメーカーをはじめ、外資系自動車メーカーが参入しているほか、国内の有力企業によるEV事業参入もみられています。また、半導体についても、投資優遇措置を導入しており、海外有力企業による投資が活発化しています。

【図表】アセアン主要国の概要
  • 上記は過去のものであり、将来を約束するものではありません。