トルコ中央銀行は10月26日、市場予想どおり、政策金利を30%から35%へ引き上げることを金融政策委員会で決定しました。利上げは今年6月以降、5会合連続で、利上げ幅は合計26.5ポイントにも及びます。しかしながら、通貨リラは対米ドルで安値を更新し続けており、今回の利上げ決定を受けても、小幅安となりました。また、対円では、7月中旬に安値をつけた後、円の軟調などを背景にやや値を戻しているものの、安値圏にとどまっている状況です。

インフレ抑制に向け、中銀は引き締めを継続へ
トルコでは、鈍化傾向にあったインフレ率が7月以降、再加速しており、9月の消費者物価指数は前年同月比+61.53%となりました。こうした背景として、通貨安や最低賃金の引き上げに伴なうコスト上昇圧力、増税などが挙げられています。そして、市場予想では、2024年4-6月期にはインフレ率が前年比+70%を上回ると見込まれています。さらに、足元で緊張が高まっている中東情勢が悪化し、原油価格の急騰につながる場合には、トルコはエネルギーを輸入に頼っているだけに、インフレ率が一段と押し上げられる恐れがあります。

こうした中、中央銀行は今回、インフレの抑制に向け、適時かつ段階的に、必要なだけ金融引き締めを強化する方針を改めて表明しました。また、市場でも、年末までに政策金利が40%に引き上げられるとの予想が拡がっています。

ただし、2024年3月には地方選挙が予定されており、それが近づくにつれ、利上げを控えさせようとエルドアン大統領が圧力をかける可能性もあり、利上げの持続性は不透明とみられています。

信認回復への道のりは長い
高インフレ以外にも、同国は、巨額の経常赤字や低水準の外貨準備など、経済面での脆弱性が目立つことなどから、リラを取り巻く環境は依然、厳しい状況です。そうした環境が改善に向かうとの兆しが増えれば、市場の評価が変化し始める可能性も否定できないものの、それまでにはまだ時間を要する模様です。

【図表】[左図]インフレ下での現金の実質的価値の推移、[右図]過去20年間における米国株式の平均年次リターン
  • 信頼できると判断したデータをもとに日興アセットマネジメントが作成
  • 上記は過去のものであり、将来を約束するものではありません。