日本のGDPは世界4位に転落と報じられた
日本が2023年のGDP規模でドイツに抜かれ、世界4位に転落するというIMF(国際通貨基金)予測が最近報じられ、注目を集めました。

同GDPは名目・米ドル建てのため、円安による為替換算値での目減りやドイツの高インフレが影響した模様です。これを日本の経済的地位の低下とする向きもあり、日本経済、ひいては日本株市場の展望を考える上で気になるところです。

そこで、本稿では、名目GDPと予想EPS(1株当たり利益)の成長率に注目することで、日本株市場の投資環境を考えてみます。

名目GDPは2024年にかけ主要国に劣らず成長
そもそも、GDPにはいくつか種類があり、景気判断の上では、物価の影響を除いた実質GDPがよく参照されます。ただし、企業会計など、日常で目にする多くの値が名目表示であることから、名目GDPが国レベルでの粗利益(=売上高-売上原価)の実感に近いと考えられます。また、私たちが日本株に投資する際には、基本的に円建ての業績動向を見ていくことになります。そこで、IMFの最新データの内、名目・自国通貨建てのGDP(以下、名目GDP)の推移をみてみます(左下グラフ)。

2000年代、日本の名目GDPは長引くデフレの影響もあり、欧米や中国などの主要国が高成長となる中でも、ほぼゼロ成長が続いていました。

2010年代以降は、政府・日銀がデフレ脱却に向け政策支援を強化したこともあり、平均的に主要国を下回る成長とはいえ、2020年のコロナショックによる落ち込みを除きプラス成長が定着するという進展がみられました。

こうした流れの中、2023年については、訪日外国人観光客や自動車輸出の回復などから、前年比+5.6%と、中国(同+4.0%)、ドイツ(同+5.0%)を上回り、2024年については同+4.2%と、米国(同+3.8%)を上回る成長が見込まれています。

消費や投資に振り向けられる経済のパイともいえるGDPが名目で主要国に劣らないペースで拡大するということは、日本企業が利益を上げやすい環境が醸成されつつあると解釈できます。

主要国を上回る日本の企業利益成長
他方、日本の上場企業の予想EPSは、約10年間、他の主要国を上回るペースで拡大してきました(右下グラフ)。①前述の、名目GDPのプラス成長、②円安や海外経済の成長取り込みによる海外事業の利益拡大、③ガバナンス改革機運が高まる中での自社株買いなどが、背景として挙げられます。

日本の経済的地位は低下していると言われてはいますが、マクロ的(名目GDP)にも、企業利益的(EPS)にも、主要国対比で決して見劣りしない成長になってきているという点は、日本株投資を考える上での前向きな材料といえるでしょう。

【図表】[左図]日本と主要国の名目GDP成長率、[右図]日本と主要国株式市場の予想EPSの伸び率
  • 信頼できると判断したデータをもとに日興アセットマネジメントが作成
  • 上記は過去のものおよび予測であり、将来を約束するものではありません。