米国の利上げサイクルは最終局面へ
米国のインフレ率の鈍化傾向を受けて、米FRB(連邦準備制度理事会)が2024年前半に利下げに踏み切るとの観測が強まっています。

最近の一部FRB高官の発言からは早期利下げに慎重な姿勢もうかがえますが、2022年3月より始まった今回の利上げサイクルは少なくとも最終局面にあるといえそうです。

そこで、本稿では、過去の利上げ終了後の米国債券・株式リターンから、今後の市場動向を探ってみます。

利上げ終了後の米国債券のリターンは好調
まず、債券のリターン(下表中)は、利上げ終了後の2年間で、いずれの場合も二ケタのプラスと好調です。これは、①既発債から高い利息を受け取れること、②利下げ観測(過去は利上げ終了から平均9ヵ月で利下げ、下表左)の高まりに伴ない市場の金利水準が低下するにつれ、利回りの高い既発債の相対価値が高まり価格が上昇すること、など債券の特性が発揮されたためといえます。

米国株式は平均で債券を上回るもバラツキあり
株式についても、パフォーマンスは概ね堅調で、平均的には債券を上回るリターンとなっています(下表右)。これは、将来の景気減速懸念を金融緩和への期待が上回る傾向を反映しているとみられます。

ただし、債券と比べて株式のリターンにはバラツキがあり、低調となったケースも散見されます。

例えば、2000年の利上げ終了後は(下表【A】)、ITバブル崩壊により、2年間で▲20%超の下落となりました。また、2006年の利上げ終了後(下表【B】)、1年間は景気の底堅さから堅調に推移しましたが、その後、サブプライムローン問題の実体経済への影響が懸念されるにつれて、当初の上げ幅を縮小しました。

これら2例を振り返ると、前者については、予想PER(株価収益率)が1999年末に25倍に達するなど株式市場に過熱感があったこと、後者については家計が過剰債務問題を抱えていたことが理由として指摘できます。つまり、金融政策の変化というよりも、蓄積された金融・経済の歪みの修正が、株価の低迷につながったと考えられます。

経済の軟着陸は株式にも好影響
足元の状況に目を向けると、予想PERは19倍と直近10年平均から大きく乖離しておらず、家計の債務水準も歴史的に見て健全な水準であるため、上述2例と比べると、金融・経済の歪みは目立っていないと思われます。 

また、1997年や2006年のケースでは、政策金利が1年以上高止まりしましたが、実体経済が崩れない限りは、株価は上昇基調を維持しました。

こうしたことなどから、米国経済が今後、軟着陸(インフレ抑制と成長維持の両立)となれば、債券・株式双方にとって良好な相場環境となる可能性があります。

【図表】米国における利上げサイクル終了時点とその後の債券・株式リターン(1989年2月24日~2020年12月19日の日次データに基づく)
  • 信頼できると判断したデータをもとに日興アセットマネジメントが作成
  • 上記は過去のものであり、将来を約束するものではありません。