半導体の安定供給確保の重要性が高まる
コロナ禍を受けてのデジタル化の進展やサプライチェーンの混乱は、世界的に深刻な半導体不足を招き、半導体は国の安全保障をも左右する戦略物資に位置付けられるようになりました。日本でも安定供給をめざした国家事業として、21年に「半導体・デジタル産業戦略」が打ち出されましたが、その後もロシアによるウクライナ侵攻や上海のロックダウンなどの影響もあり、半導体供給を巡る危機感は高まっており、各国や企業の対応も加速しています。
23年度の半導体関連予算は前年度を上回る
近年、日本政府は半導体産業への積極的な支援を展開しています。22年度補正予算で計上された半導体関連予算は約1.3兆円と、過去に例を見ない水準となりましたが、23年11月末に成立した23年度補正予算では、それを上回る約1.5兆円、既存基金の残額を含めると総額2兆近い予算が、半導体関連の支援に充てられることになりました。更に、政府は2030年までに12兆円を超える規模の官民投資を行なうと述べています。
こうした中、各地で大規模な投資案件が進行しています。「2030年までの10年間で半導体関連企業の売上高を3倍にし、15兆円超に押し上げる」という政府の目標に向け、半導体の製造にかかわる企業のほか、製造装置や素材など、幅広い企業が生産拡大に向けた取組みを進めています。中でも、日本の先端半導体の製造基盤として、大きな期待が寄せられているのがJASMとRapidusです。
日本各地で半導体産業の集積が進む見込み
政府が世界最大級の半導体メーカー、TSMC(台)の工場誘致を実現させ、設立されたのがJASMです。24年中の生産開始をめざし、現在、熊本県で工場建設が進められています。これを受けて周辺地域では関連産業の大型投資が相次いでおり、同県への経済波及効果は10年間で6.9兆円規模に上ると試算されています。
また、国内8社の出資で設立されたRapidusは、23年秋から北海道千歳市で工場建設が本格化しています。同社の投資総額は5兆円に上るとされており、これは22年度のトヨタ自動車の設備投資額の3倍強、道内の全産業の設備投資額の約14倍の水準にあたります。巨大工場の出現に伴ない、千歳市周辺にも関連産業の進出が相次ぎ、半導体産業の集積が進む見込みです。
半導体関連投資が進む各地では、工業用水や道路、住宅といった周辺のインフラ整備も急がれています。政府は投資規模や雇用創出効果が大きい半導体拠点へのインフラ整備支援を発表しており、早ければ24年初頭から実施する見込みです。
半導体産業の成長は魅力的な投資機会になり得る
日本が先端半導体分野で再び世界に追いつくのは容易ではなく、行く手には様々な課題もあります。しかし、ここが最後のチャンスとも言えるだけに、政府の本気度は極めて高く、日本の半導体産業復活の機運は高まりつつあります。同時に、日本企業の成長は、世界と比較しても変化率の大きい、魅力的な投資機会になり得ると期待されます。
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