アジア主要株式市場への海外からの資金流入額(純流入ベース)は、昨年通年の623億米ドルに続き、本年は年初来の約2ヵ月半で498億米ドルと、ハイペースで推移しています。

そこで、本稿ではアジア主要株式市場への資金流入に関し、国・地域の特徴や背景を探ります。

日本やその他アジアが選好対象に
まず、目立った特徴として挙げられるのが、海外投資家による中国以外のアジア株式市場への積極的な投資姿勢です。中国では今年に入り、当局による景気や資本市場へのテコ入れ策を受けて、資金流入に回復がみられるものの、昨年初来の推移をみると、資金流入は他のアジア株式市場と比べて低調です。(左下グラフ【A】)。その一方で、日本及びその他アジアへの資金流入は堅調となっています(左下グラフ【B】)。

日本はアジアトップの資金流入を記録
日本は、昨年初からのアジア株式市場への資金流入の約4割を占めており、本稿の分析対象の中で、資金流入が首位となっています。これは、昨年の東証(東京証券取引所)要請をきっかけに進展が見込まれる企業の経営改革や、デフレ脱却期待といった日本固有の材料が海外投資家の関心を集めたためとみられます。

中国の代替先として熱視線を集めるインド
その他アジアの中では、インドへの資金流入が目を引きます(右下グラフ【C】)。その要因としては、中国が不動産不況や米国との地政学的対立などの課題を抱える中、海外投資家が中国に代わる高成長国の投資先としてインドを選好しているためとの指摘があります。また、今年の4~6月に予定されている総選挙で、2014年の発足以降、経済改革で着実な成果をあげてきたモディ政権の続投が決まるとみられていることも、追い風となっています。

AI(人工知能)ブームで盛り上がる韓国・台湾
韓国・台湾では、昨年10-12月期以降、資金流入が拡大しています(右下グラフ【D】)。これは、世界的にAI関連需要の拡大が見込まれる中、先端半導体の製造で世界をリードする韓・台が注目されているためと考えられます。特に台湾については、今年1月の総統選挙前より資金流入が続いていることから、地政学的懸念がくすぶる中でも、海外投資家がAI関連需要に関し強気であることがうかがえます。

資金流入要因はいずれも中長期的投資テーマ
上述の各市場へ海外資金の流入を促している3つの要因、即ち①東証要請などをきっかけに高まった日本の変革期待、②中国の代替投資先としてのインド、③AIブームによる韓国・台湾のポテンシャル、はいずれも一過性の話題というよりも、今後のアジア株式市場をみる上で鍵となる、中長期的な投資テーマと考えられます。そのため、引き続き、海外投資家の売買姿勢に影響を与える可能性があり、要注目といえます。

【図表】アジア主要株式市場における海外資金の流出入状況(2023年初から2024年3月15日までの週次の累計額)
  • 信頼できると判断したデータをもとに日興アセットマネジメントが作成
  • 上記は過去のものであり、将来を約束するものではありません。