好調な日本の半導体製造装置産業
日本の鉱工業生産が停滞する中にあって、半導体製造装置産業は目覚ましい成長を見せています。半導体製造装置の生産動向は近年加速度的に拡大しており、今や製造業の牽引役の一つとなっています。
日米半導体協定(1986年)以降、日本の半導体メーカーは勢いを失い、更にはリーマン・ショック(2008年)を機に、投資額が世界の競合他社に比べて縮小したことが、世界での地位後退につながったとされます。しかし、こうした状況においても、日本の半導体製造装置企業は研究開発を継続し、高い競争力を維持してきました。そして海外にビジネスを広げることで、世界の半導体産業の成長を取り込むことに成功しました。製造装置市場に占める日本勢のシェアは約3割(2021年度実績)を占めることからも、日本が半導体産業の復活をめざしていく上で、製造装置産業は重要な役割を担うと考えられます。
日本の半導体製造装置企業は高い競争力を維持
日本の半導体製造装置企業が世界で評価される最大の理由として、高い技術力が挙げられます。日本企業は技術開発力の高さはもちろんのこと、最先端の要求に応えるすり合わせ技術や手厚いサポート力などで、顧客である世界の半導体メーカーから信頼を勝ち取ってきました。こういった優位性は一朝一夕に構築できるものではないため、今後も日本企業の競争力は持続すると考えられます。また、今後の半導体の性能向上の鍵となる「後工程」分野に強みを持つ日本企業が多いことも、大きなアドバンテージになります。現在、日本で大型投資を進めているTSMC(台)やマイクロン・テクノロジー(米)といった名だたるグローバル企業は、日本への投資を決めた大きな理由として、日本に製造装置や部素材の強固な産業基盤があることを挙げています。
半導体工場の増加が製造装置産業の追い風に
生成AIを活用したサービスの本格化を背景に、2024年の半導体市場は前年比10%超の拡大が見込まれるなど、今後の半導体の需要増加は加速するとみられます。こうした中、各国は半導体を重要な戦略物資と位置づけており、世界中で盛んな工場誘致と新規工場の建設が進められています。日本でも2021年以降、政府が半導体産業の支援に本腰を入れており、国内の投資案件に対して次々に巨額の補助金を投入しています。その結果、今年12月に予定されるJASM*第1工場の稼働を筆頭に、日本各地で半導体工場の稼働ラッシュが本格化する見込みです。
日本および世界での工場増加に比例して日本の半導体製造装置の需要も拡大するとみられることから、引き続き半導体製造装置産業が日本の製造業の牽引役となることが期待されます。
TSMCが過半数を出資する子会社。ソニーセミコンダクタソリューションズとデンソーが少数株主として参画。第2工場の建設にはトヨタ自動車も資本参加を表明。
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