トルコ中央銀行は今年3月、通貨リラの下落加速やインフレ率の上振れなどを受けて予想外の追加利上げ(45%→50%)を行ないました。これにより、昨年6月以降の今回の金融引き締め局面での利上げ幅は、合計41.50ポイントとなりました。
同中央銀行はその後、利上げ効果の発揮には時差を伴なうとして、政策金利を据え置く一方、5月23日の会合後には、預金準備率の引き上げや外貨建て融資の制限などの引き締め措置を発表しました。また、インフレ・リスクを注視し、引き締めスタンスを維持する姿勢を堅持しています。
なお、トルコの格付けについては、依然として投機的等級ながら、今年3月にはフィッチ、5月にはS&Pが、引き上げ(B→B+)を発表しています。
こうした中、通貨リラは下落局面を脱しつつあり、3月下旬以降、対米ドルで概ね横ばい、さらに、円の弱さもあり、対円では緩やかながらも持ち直しとなっています。
高水準のインフレ率は今後、鈍化する見通し
トルコのインフレ率(消費者物価指数の前年比)は今年4月で69.80%と、かなりの高水準です。ただし、上述のような措置により、金融環境が引き締まっているほか、4-6月期以降は引き締め効果の浸透に伴ない、内需の鈍化が見込まれるとして、トルコ中央銀行はインフレ率が今年末には38%、来年末には14%へ鈍化すると想定しています。
また、政府は5月中旬に財政緊縮策を発表し、歳出削減や予算配分の効率化により、インフレ率の抑制・安定化などに努めるとしました。さらに、同月下旬にはエルドアン大統領も、インフレ率の一時的な低下ではなく、持続的な低下をめざすと述べています。
政策運営は容易でないが、先行きに要注目
同国は、高インフレ以外にも、経常収支や外貨準備などの面で脆弱性を抱えており、今後の政策運営は容易ではありません。しかし、適切な政策対応が続けられるようであれば、金融市場での評価の回復が進むとともに、トルコ・リラも持ち直すと期待されます。
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