足元で、米企業のスペースXとボーイングの2社が、人の輸送を目的としたロケット打ち上げにおける新たな挑戦を相次ぎ成功させました。米航空宇宙局(NASA)が2005年頃より宇宙開発の民間委託を進めて20年足らずながら、民間主導での宇宙開発にはめざましい進歩がみられます。

人工衛星ビジネスはすでに実用段階へ
宇宙関連ビジネスの中でも、実用化が最も進んでいるのが人工衛星分野であり、これまでスペースXが中心となって衛星打ち上げを積極化させてきました【図表①②】。同社のほか、欧ユーテルサット・ワンウェブや米イリジウム・コミュニケーションズなどの企業は、構築した自社の衛星網を介して通信サービス展開を始めており、日本でも、これらと提携した通信各社がサービス提供を進めています。

これにより、基地局なく大容量の通信が可能となるため、過疎地や山間部、最近では被災地などでも貢献するなど、人工衛星の通信インフラとしての重要性は高まりつつあります。世界には、新興国を中心に依然として接続困難な地域もあり、今後、こうした場所でのアクセス拡大も期待されています。

飛躍的な拡大が見込まれる衛星利活用サービス
このように衛星通信サービスの基盤整備が進んだことで、人工衛星を利活用したビジネスも飛躍的な拡大が見込まれています。代表例として、IoTに不可欠とされる5G(第5世代通信システム)衛星通信市場は、コロナ禍以降のデジタル化の加速も後押しし、2032年までの10年で10倍超にまで拡大するとみられています【図表③】。特に、物流や海運、自動運転の進展が見込まれる自動車、航空など、経済基盤を支え、強固な接続環境が求められる分野を中心に需要が見込まれており、衛星通信の重要性はますます高まると考えられます。

新興企業も参入し、幅広い分野で期待される商機
宇宙関連ビジネスの特徴は、波及効果の大きさにあります。人工衛星やロケットにおいて、製造・技術関連企業が広く携わるのみならず、打ち上げ後の宇宙空間や地上での運営維持、また、サービスの利活用など、関係する企業は多岐にわたります。

加えて近年は、いわゆる「ニュースペース」とされる新興宇宙企業も勢いを強めつつあります。日本では、月面輸送サービスを目指す会社が23年4月に、宇宙ゴミの除去を行なう会社が今月5日に、それぞれ東証への上場を果たしました。

莫大な費用を要し、収益化までの時間を見通しづらい宇宙関連ビジネスではありますが、様々な場面で実用化の種が芽を出しつつあることから、その重要性を、私たちが身近で実感できる日も近いかもしれません。

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【図表】[左上図表①]ロケット打ち上げの用途内訳(2024年1-3月期)、[左下図表②]小型衛星の打ち上げ数の推移、[右図表③]世界の5G衛星通信市場の拡大予想
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