6月9日に開票された欧州議会選挙で、フランスでは大統領支持派の与党連合が極右の国民連合に大敗しました。この結果を受け、マクロン大統領が民意を問うべく下院(国民議会)の解散・総選挙を決断して以降、金融市場では同国の政治リスクが意識されています。

そこで、本稿では、総選挙の情勢に加え、金融市場の反応とその背景にある財政問題についてご紹介します。

与党連合が苦戦する中、金融市場に警戒感
同国の総選挙は、第1回投票と決選投票の2段階で実施されます。第1回投票で、過半数の得票などの条件を満たした候補者がいれば、その時点で当選となります。しかし、通例では第1回投票で決まらない選挙区が多く、第1回投票の上位2人と、有権者の12.5%以上の票を獲得した候補者が決選投票に進み、最多得票者が最終的に当選となります。今回は、第1回投票が6月30日に、決選投票が7月7日に行なわれます。

各種世論調査によると、国民連合は、過半数(定数577議席中289議席)には届かないものの、最大勢力となる可能性が高いとみられています。一方で、中道の大統領支持派は、解散前の250議席の半分以下になるとの予測もあり、支持率で2位につけている左派連合の新人民戦線に次ぐ、第3勢力に後退するとみられています。

このように、大統領支持派が議席を大きく減らすとの見方から、政治・経済の方向性の転換が警戒されており、同国の金融市場では主要株価指数がやや軟調に推移しているほか、国債のリスクを示すとされるドイツ国債との利回り差が拡大しています(左下グラフ)。

財政健全化が課題も、政治的に対応が困難に
金融市場の警戒の背景には、コロナ禍対応や金利上昇などで悪化した同国の財政赤字があります(右下グラフ)。EU(欧州連合)は、今年から、コロナ禍を受け一時停止していた財政ルール(財政赤字はGDP比3%以下など)を復活させ、6月19日には、同国を含む7ヵ国に是正を求める手続きを開始しました。こうした中、財政健全化への道筋をつけることは、同国の喫緊の課題となっています。

しかし、支持率で大統領支持派を上回る国民連合と新人民戦線は、マクロン政権が実施した年金改革(給付年齢引き上げ)の撤廃で一致しており、さらに、国民連合は燃料等への付加価値税の減税、新人民戦線は生活必需品の価格凍結と、ともに財政拡張的な公約を掲げています。そのため、大統領支持派の退潮が鮮明となれば、27年に財政赤字をGDP比3%以下とする同国政府の目標の達成は困難になるとみられます。

また、総選挙でどの政治勢力も過半数とならない場合、連立交渉や大統領による首相指名が難航し、政策対応が遅れる可能性があることも懸念されます。

こうしたことから、当面は同国の政局、金融市場、財政の動向から目が離せない状況が続きそうです。

【図表】[左図]欧州議会選挙前後のフランス金融市場の推移、[右図]フランスの財政赤字の推移
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