2025年の世界見通しを0.1ポイント上方修正
IMF(国際通貨基金)は7月16日に最新の世界経済見通しを発表し、世界のGDP成長率について、2024年は据え置き、25年は前回4月の想定から0.1ポイント上方修正しました。世界景気は24年に前年比+3.2%で軟着陸し、翌年には成長率が僅かに高まるものの、足踏み状態と形容されています。
2024年の見通しは、ユーロ圏、中国、インドなどで上方修正、米国や日本などでは下方修正
個別の国・地域の24年の見通しについては、先進国では、ユーロ圏について、サービス業の改善にけん引されて景気回復の兆しが顕在化したと評価したほか、実質賃金の上昇や利下げによる需要押し上げ効果を反映し、上方修正しました。一方、米国については、個人消費の減速や純輸出の不振から1-3月期に成長率が想定を下回ったことから下方修正しました。日本については、品質不正問題で自動車メーカーの生産・出荷が停止し、1-3月期に供給が混乱したことを主な背景として引き下げました。ただし、春闘での大幅な賃上げ妥結に伴ない、年後半以降は個人消費の好転が見込まれています。
新興国では、中国やインドでの景気改善を背景にアジアの見通しを引き上げました。中国については、1-3月期における個人消費の回復と好調な輸出を主な理由として、また、インドについては、2023年の成長率が上方改定されたことに伴なう影響のほか、農村地帯を中心に個人消費の見通しが改善したことを背景として、上方修正しました。一方、ブラジルについては洪水の短期的な影響、メキシコについては需要が和らいだことを反映し、下方修正しました。
主なリスク要因はインフレの上振れ
IMFは、世界経済見通しに対する主なリスク要因として、保護主義的な貿易規制が拡がり、政策の不確実性が増している中、サービス価格を中心としたインフレ率の上振れに伴ない、金利がより高く、より長期に維持される可能性を挙げています。右下のグラフに見られる通り、インフレ率は、財については鈍化したものの、労働集約的なサービスについては、賃金上昇などを背景に高止まりしています。また、保護主義的な貿易規制の拡がりにより、国際的な商品市況に押し上げ圧力がかかる恐れがあるとしています。
更に、今年は主要国で重要な選挙が相次ぐことなどから、財政拡張に伴なう債務状況の悪化や保護主義に拍車がかかるリスクもあるとしています。
- (出所:IMF「World Economic Outlook Update, July 2024」)
- 上記は過去のものおよび予測であり、将来を約束するものではありません。