政策金利は8会合連続で据え置き
米FRB(連邦準備制度理事会)は、7月30~31日のFOMC(連邦公開市場委員会)で、市場予想通り、政策金利(FFレートの誘導目標)を8会合連続で5.25~5.50%に据え置きました。ただし、FRBのパウエル議長は会見で、次回9月の会合での利下げもあり得るとの見解を示しました。

31日の米国市場では、朝方に発表された雇用関連指標が相次いで市場予想を下回ったほか、中東情勢を巡る地政学リスクの高まりもあり、国債利回りが低下しました。株式市場では、半導体関連株のほか、景気敏感株なども買われ、主要3指数が揃って上昇しました。また、外国為替市場では、米ドルが売られた一方、日銀による追加利上げの決定なども背景に円が買われ、円相場は1米ドル=149円台に上昇しました。

インフレ改善に進展、労働市場は正常化の過程
米国のインフレ率は、モノの分野では沈静化し、サービス分野でも、緩慢ながら鈍化傾向となっています。こうした中、今回のFOMCの声明文では、インフレ率について、従来、「高止まり」としていた表現が「幾分、高止まり」に和らげられた上で、「2%の物価目標に向けて前進した」との評価が示されました。

また、従来、インフレ・リスクに注意を払うとされていた文言が削除され、インフレだけでなく、雇用のリスクにも注意を払うとの表現に変更されました。ただし、米国の景気は底堅く、労働市場についても、軟化傾向が見られるものの、過熱状態から正常化に向かっている状況にあると考えられます。

今後の判断はデータ次第
今回のFOMCおよびパウエル議長の会見を受け、金融市場では9月の利下げ開始観測だけでなく、11月や12月の追加利下げの観測も強まりました。ただし、米大統領選挙(11月5日投開票)と前後する11月のFOMCでは、政治的中立性の観点から、利下げは回避されるとの見方も有力です。

いずれにしても、金融政策の行方を巡っては、今後も、サービス分野を中心としたインフレ率のほか、労働需給や賃金上昇率、長期金利の水準など、幅広いデータが注目されます。

【図表】[上図]年内のFOMC開催予定、[下図]24年6月のFOMC参加者の見通し(中央値)
【図表】[左図]米国の消費者物価上昇率(前年同月比)と金利の推移、[右図]米労働市場の主要指標の推移
  • 米労働統計局、全米経済研究所(NBER)、FRBなどの信頼できると判断したデータをもとに日興アセットマネジメントが作成
  • 上記は過去のものおよび見通しであり、将来を約束するものではありません。