金価格は足元で強含む展開が続いています。今春以降、中東情勢の緊迫化をはじめ、金価格を押し上げる状況が続いたことに加え、7月下旬以降は、米景気悪化懸念に伴ない投資家のリスク回避姿勢が強まったことや、米利下げ観測の強まりなどを受けて米ドル安が急速に進んだことなどから、ロンドンの金現物価格は最高値圏となっています。

金価格を押し上げる材料が相次ぐ
実物資産としての強みと米ドルの代替資産としての一面を持つ金は、主に、実需のほか、投資家のリスク回避時や米ドル安の際に選好されると言われています。また、金利がつかないことから利下げ局面で買われる傾向にあります。2022年以降は、各国中央銀行による外貨準備需要の高まりや世界的な個人の金投資ブームに加え、今春以降、地政学リスクの高まりや米利下げ観測が材料視されたことなどが、金価格を押し上げました。8月初旬には、米景気減速懸念などを背景に、世界の株式市場が急落に見舞われるなど、先行きに対する警戒感は強まっており、金相場は堅調な地合いが続くと見込まれます。

分散投資先としても有効な資産
こうしたなか、改めて押さえたいのが分散投資手段としての金の有効性です。金の値動きは元来、株式や債券とは異なる傾向にあるほか、米ドルとは逆の値動きをする傾向にあり、分散投資に有効とされます。相関係数を見ても、2001年からの期間で先進国株式と金は0.10と、連動性の低さが示されています。

【図表】金との相関係数

金をあわせ持つことで期待される運用効率改善
こうした特性を踏まえ、先進国株式に金を組み合わせた場合の円換算ベースのリスク・リターンを見ると(グラフ右下)、直近10年では、金を組み合わせることで、リターンを大きく損なうことなくリスクを抑制できたことが確認できます。投資時期や期間によっても傾向は異なりますが、数々の難局に見舞われた2001年以降では、リスクを抑制させながらリターンの改善を図れており、どちらの期間でも運用効率の改善につながっています。

金融市場では当面、不安定な展開が見込まれることに加え、為替市場では、米利下げ観測が強まるなか、円高(米ドル安)圧力が続くと考えられます。金価格は高値水準にあるため調整が入る可能性はあるものの、価格特性を踏まえれば、ポートフォリオの補完的位置づけとして、中長期の資産運用に金を活用することは有効と考えられます。

【図表】[左図]金価格と主要指標の推移(米ドルベース)、[右図]先進国株式と金を組み合わせた場合のリスク・リターン(円換算ベース)
  • 当資料に示す指数の著作権等の知的財産権その他一切の権利は、指数の算出元または公表元に帰属します。
  • 上記は過去のものおよびシミュレーションであり、将来を約束するものではありません。
  • 信頼できると判断したデータをもとに日興アセットマネジメントが作成