日米の株式相場は、7月中旬に最高値を付けるなど堅調な展開となっていましたが、その後、米国の景気減速懸念などを受け、調整局面を迎えています。ただし、米国のS&P500指数と日本のTOPIX(東証株価指数)の高値から8月5日までの下落率を比較すると、S&P500指数の▲8.4%に対しTOPIXは▲23.9%と、日本株式の下落幅の大きさが目立ちます(左下グラフ)。そこで本稿では、株価の主な変動要因(右上表)として、①企業業績見通し、②金利、③投資家のリスク認識、に注目し、足元の下落の特徴を探ります。
円高を考慮しても日本株式の下げが目立つ
TOPIXとS&P500指数の高値から8月5日までの下落率に関し、主な変動要因による寄与分析を行なったところ(右下グラフ)、①企業業績見通しは、両指数ともに僅かなプラス寄与となりました。②金利については、米国で利下げ開始が視野に入る一方で、日本で漸進的な利上げが見込まれている構図の下、TOPIXはS&P500指数ほどには金利低下の恩恵を受けませんでした。しかし、それでも、同要因はTOPIXに対しプラス寄与となりました。このように、①と②だけをみれば、両指数の間に大きな差は生じていなかったと考えられます。
こうした中、両指数において大幅にマイナス寄与したのが、③投資家のリスク認識(今回はリスク回避なのでマイナスに作用)です。これは、米国の7月の雇用統計が市場予想より弱い内容となったことを受けて台頭した、米国景気の先行き不安などを反映しているとみられ、今回の株価下落の主因になったと考えられます。ただし、S&P500指数への寄与が▲18%ポイント程度だったのに対し、TOPIXへの寄与は▲37%ポイント弱と、両指数で大きく異なります。その一因として、急速な円高進行を受けた為替変動による業績リスク(将来的な①の下方修正リスク)への意識の高まりなどが考えられます。しかし、弊社が6月末に算出した、為替水準別の予想EPS(1株当たり利益)に基づき試算すると、③に影響するとしても▲5%ポイント程度とみられます。そのため、為替などの日米の差を考慮しても、③のTOPIXへのマイナス寄与がS&P500指数と比べて大きすぎる感は否めません。
日本株式の好材料は変わらず、持ち直しに期待
脱デフレや企業の稼ぐ力の改善、東証の要請を受けた経営変革といった、日本株式を取り巻く好材料に変化はないと思われます。当面は③投資家のリスク認識が相場への重荷となりそうですが、その押し下げ幅が大きいだけに、米国景気や円高などへの懸念が後退した場合の持ち直し余地も考えられ、冷静に動向をみていく必要がありそうです。
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