11月5日に予定されている米大統領選挙を巡る情勢は、7月下旬に民主党のバイデン氏が選挙戦からの撤退を表明して以降、大きく変化しています。
選挙戦をリードしていた共和党のトランプ氏を、民主党の後継候補となったハリス氏が猛追する展開となり、8月上旬には、ハリス氏が支持率で逆転しました(左下グラフ)。一時は、確トラ(トランプ氏でほぼ確定)との言葉も聞かれましたが、足元で、もしハリ(もしハリス氏が大統領になったら)への関心が高まっています。
そこで本稿では、ハリス氏が掲げる経済政策の主な公約と今後の注目点をご紹介します。
中間層への手厚い支援を打ち出したハリス氏
ハリス氏が掲げる経済政策に関する公約をみると、家計の負担軽減に向けた税額控除や、住居費高騰への対処としての新築住宅の供給促進など、物価高に苦しむ中間層を主な対象とする手厚い支援策が目立ちます。一方で、法人税率の引き上げや、食品価格のつり上げ禁止に向けた連邦法の制定、投資家による住宅買い占めの抑制、にみられるように、企業や富裕層に対しては負担・規制を課す内容になっています。
ハリス氏の経済政策に関するこれらの公約は、現職のバイデン氏の路線をほぼ踏襲する内容であり、トランプ氏が主張する関税の一律引き上げといった過激な政策とは距離を置くものです。
そのため、ハリス政権樹立の可能性が今後一段と高まった場合の金融市場の反応を考えると、政策の不確実性の低さが好感されると思われます。一方で、企業業績への影響という点で、法人税率の引き上げや各種価格の抑制策などは嫌気されるおそれがあります。
公約実現には議会選挙の結果も大きく影響
このように、金融市場にとって好悪マチマチの側面があるハリス氏の経済政策に関する公約ですが、米国では議会が予算面などで強力な権限を有することから、大統領選挙だけでなく、同時に行なわれる議会選挙の結果も、各公約の実現可能性に大きく影響する点に留意が必要です。
例えば、法人税率の引き上げについては、ハリス氏が大統領選挙で勝利しても、議会がねじれ(大統領の政党と、上院か下院または両院の多数党が異なる)となれば、実現困難とみられています。
他方で、ハリス氏が年収40万米ドル未満の国民に増税しないと表明したことから、2025年に期限を迎えるトランプ減税は、トリプルブルー(大統領に加え上下両院を民主党がおさえる)となっても、少なくとも部分延長になると見込まれます。
議会選挙を巡っては、7月中旬段階で、大統領選挙以上に共和党が優勢との見方がありましたが、民主党が大統領候補者をハリス氏に差し替えて以降、同党が勢いづいているとの指摘もあります。
こうしたことから、今後の政策を展望する上では、依然として接戦といわれている大統領選挙だけでなく、議会選挙の動向にも注目する必要があります。
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