岸田首相は、政治とカネの問題などで自民党に対する国民の不信が拡がる中、党トップとしての責任をとり、9月の同党総裁選挙への不出馬を表明し、新総裁の選出後に退任することとなりました。同首相の在任日数は8月末時点で1,063日と、戦後8番目の長さです。ここで、東証再開後の鳩山一郎政権以降の歴代首相在任時の株価動向を振り返ると、下表の通り、総じて、3年を超えるような長期政権下で株価騰落率が高くなっています。(*東証再開前の1948年10月就任の吉田茂首相の在任期間:54年12月までの2,616日)

岸田政権に対する世論調査での支持率は今年、概ね20%台での推移と、低迷しています。その一方、日経平均株価やTOPIX(東証株価指数)といった主要指数が7月に史上最高値を更新しました。同首相は、「成長と分配の好循環」「資産所得倍増プラン」などを掲げ、家計金融資産の半分以上を占める現預金を投資に向かわせることに加え、企業価値向上の恩恵を家計に還元させることにより、更なる投資や消費につなげ、家計の勤労所得だけでなく金融資産所得も増やすことをめざしてきました。そして、企業に賃上げを強く呼びかけたほか、株式・投資信託の運用益を非課税にするNISA(少額投資非課税制度)について、制度の恒久化と非課税枠の拡大を行ないました。さらに、投資への流れを加速させるべく、金融リテラシー(知識)の向上に向け、金融経済教育推進機構(J-FLEC)を設立しました。

こうした施策は、金融・資本市場で概ね好感され、日本の株式相場の上昇に貢献したと考えられます。ただし、日本株式の上昇を主にけん引したのは、変革への期待を高めた海外投資家でした。

次の首相が、家計の資産運用の促進を継続するだけでなく、「物価・賃金の好循環」を実現し、日本が長期低迷からの脱出に成功したと国民に実感させることができれば、長期政権となる可能性が高まるほか、国内資金にも支えられる形で、日本の株式相場が一段と上昇すると期待されます。

【図表】戦後の歴代首相在任時の日経平均株価騰落率
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