政策金利のほか、景気・物価の見通しも維持
日本銀行(以下、日銀)は、9月19~20日に開催した金融政策決定会合で、政策金利(無担保コール翌日物金利の誘導目標)を0.25%程度で据え置くことを決めました。

会合後の公表文では、個人消費についての判断が、従来の「底堅く推移」から「緩やかな増加基調」へ引き上げられたものの、景気については、「一部に弱めの動きもみられるが、緩やかに回復している」との判断が維持されました。先行きについても、「緩和的な金融環境などを背景に、所得から支出への前向きの循環メカニズムが徐々に強まることから、潜在成長率を上回る成長を続ける」との見方が維持されました。また、消費者物価については、需給ギャップの改善や賃金・物価の好循環の強まりなどにより、2024~26年度の見通し期間後半には、「物価安定の目標と概ね整合的な水準で推移する」との見通しが維持されました。

20日の市場では、日銀の利上げ路線が確認できたとして、一時、国債利回りが上昇したほか、円相場も1米ドル=141円台後半に上昇しました。また、前日の米株高の影響などから大幅高となっていた株式相場は、上げ幅を縮めて引けました。

植田総裁、円安修正で政策判断に時間的余裕
その後、日銀の植田総裁は会見で、経済・物価が見通しに概ね沿って推移すれば、それに応じて政策金利を引き上げ、金融緩和の度合いを調整していく方針を再確認しました。ただし、足元での円高の進行に伴ない、年初以降の円安を背景とした物価の上振れリスクが相応に低下しているとして、8月以降の金融・資本市場の不安定化の背景にある、海外、特に米国の経済状況を確認していく「時間的余裕がある」と述べました。

総裁会見を受け、市場では利上げへの警戒感が和らぎ、国債利回りが低下に転じたほか、円相場は143円台後半へ反落しました。

政策判断にあたり、米国経済の先行きも考慮
国内での注目点として、同総裁は、10月を中心とするサービス価格の改定時期における賃金上昇の転嫁状況や、来年の春闘に向けての今秋以降の動き、消費の動向などを挙げました。今後の政策判断にあたっては、さらに米国経済の先行きも見極めながら、慎重に進められるとみられます。

【図表】[上図]金融政策決定会合の予定、24年7月の展望レポートの見通し(中央値)、[下左図]金利と円相場の推移、[下中央図]物価上昇率(前年比)の推移、[下右図]賃金(前年比)と消費の推移
  • 日銀、総務省、厚生労働省などの信頼できると判断したデータをもとに日興アセットマネジメントが作成
  • 上記は過去のものおよび見通しであり、将来を約束するものではありません。