日本の半導体材料企業は高い競争力を持つ
半導体産業において、日本企業は製造装置や材料の分野で高い存在感を示しており、世界シェアは製造装置で約3割、材料では約5割に及ぶとされています。とりわけ材料分野では、日本勢がシェアを独占している素材も複数あります。
その理由として、日本企業の高い技術開発力や最先端の要求に応えるすり合わせ技術、手厚いサポート力などが挙げられ、材料メーカーは顧客である世界の半導体メーカーの要望に細かく応えることで高い成長を遂げてきました。
日本の半導体材料企業が抱える問題点とは
世界最大級の半導体メーカー、台湾のTSMCの子会社として設立されたJASMでは、24年末に第1工場が、27年には第2工場の稼働が予定されており、回路幅の微細加工が28~6nm(ナノメートル*)の先端半導体が量産される予定です。ただし、日本の先端半導体分野は世界から10年以上遅れていると言われており、これまで国内では40nmまでの半導体しか生産されていませんでした。そのため、海外企業向けの高性能材料は海外の工場で製造されているケースも多く、JASMが目標とする「製造装置や材料の国内調達率50%」の実現は、現状では難しいとの見方があります。10億分の1メートル。半導体は回路を微細にし、集積度を高めるほど性能が上がる。
また、最先端半導体の国産化をめざして設立されたラピダスでは、いまだ世界のどのメーカーも実現していない、2nm以下の半導体の量産を2027年を目途に行なうとしていますが、それには更なる高性能材料が必要とされるほか、北海道工場への輸送に関し、ガスや薬液などが危険物に該当するため、青函トンネル経由で運べないといった輸送網の問題も指摘されています。
急速に整いつつある半導体サプライチェーン
こうした状況を受け、日本の半導体材料企業は次々に態勢を整えつつあります。政府が先端半導体の確保と並行して「半導体サプライチェーンの強靭化」を経済安全保障上の重要戦略に掲げ、大規模な支援を行なっていることもあり、足元で半導体材料や装置企業の投資が活発化するなど、先端半導体のサプライチェーンが急速に整い始めています。今後は先端半導体工場の周辺に多くのサプライヤーが集積するとみられ、試算によると、TSMCが工場を構える熊本県に進出・投資する企業は170社超、全体の経済波及効果は11兆円超(22~31年)とされるほか、ラピダスの拠点、北海道では、関連サプライヤーを含め、全体で18兆円超(23~36年度)の経済効果となる見込みです。このほか、国内で最先端材料の製造能力が高まれば、先端品の開発を行なう世界の半導体メーカーの研究拠点を日本に誘致する効果も期待され、更なる好循環が生まれる可能性もあります。
今後もAI向けなどで先端半導体市場が大きく拡大するとみられる中、日本の半導体材料や製造装置メーカーをはじめ、関連する多くの周辺産業にも中長期的な恩恵が及ぶと期待されます。
![【図表】[左図]経済安保基金による主な半導体サプライチェーン強靭化支援、[右図]政府の支援で動き出した大規模投資案件 (半導体製造装置・部素材)](/files/market/rakuyomi/images/rakuyomi_vol-2021.jpg)
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