2023年、東京証券取引所からプライム市場、スタンダード市場の上場企業に対し、「資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応」が要請されたように、昨今、企業は、経営の効率化や株主還元を求める声を強く受けています。また、株式市場では企業価値向上に向けた企業の取り組みに関心が集まっています。
株価を動かす大きな要因となる企業業績
リーマン・ショックの影響が落ち着いた、2011年以降のTOPIX(東証株価指数)の推移(下グラフ参照)からわかるように、中長期的に見た場合、一般に株価は、企業業績(EPS(一株当たり利益))の推移に影響を受けます。ただし、短期的には、世界各国の経済指標や、金融当局者・政治家の発言、様々な事件などの「材料」が引き起こす市場の変動を受け、EPSの動向と離れた動きを見せることもあります。
そうした「材料」が企業業績に大きな影響を与えない場合、株価はEPSの推移に沿って動く傾向があり、中長期での投資を考えた場合、そうした「材料」を吟味し、企業業績、とりわけその成長性などを検討することが重要となります。
株式投資の魅力の一つである配当金
株式投資の魅力には、値上がり益の獲得の他に、配当金の受け取りがあります。海外に比べ日本企業の配当は少ない傾向にあると言われていますが、日本では、業績が落ち込んだ時も安易に配当金を減らさず、一定の配当水準を維持する安定配当に重きを置いてきたように考えられます。しかしながら、アベノミクスが導入された前後からは、業績の成長に加え、先にも述べた株主還元を重視する傾向が強まったことなどもあり、配当金の水準は増加傾向となっており、足元では、2011年初頭の約3.5倍となっています。
また、各企業において、EPSのうち配当金として還元する割合である配当性向を引き上げる動きが強まっており、配当金の増加率はその源泉であるEPSの成長率を上回っています。
配当金を含めて考える株式投資の妙味
足元でTOPIXの予想配当利回りは2.4%(2024年9月末時点)となっており、近年は恒常的に2%を上回る状況にあります。こうしたことを受け、配当金を含めたTOPIXの推移は、配当金を含まない場合の推移よりも上昇率が高く、近年、その傾向がより強まっていることが分かります。
この先も株主還元の強化などにより、配当金額は企業業績以上に増加すると期待され、中長期の投資を検討する際には、配当金の受け取りも考慮することが重要と考えられます。
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