2024年7-9月期の運用成績
厚生労働大臣から寄託された公的年金の積立金の管理・運営を行なう、年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)は、2024年9月末現在、248兆円の資金を運用しています。今月初に発表された2024年7-9月期の運用成績は、約9.1兆円のマイナス(期間収益率は▲3.57%)でした。
7-9月期は、日銀の利上げや米景気悪化懸念などを背景に8月に一時円高・株安が進み、厳しい投資環境となりましたが、GPIFの運用成果の内訳を見ると、外国株式、外国債券、国内株式はマイナスだったものの、国内債券はプラスとなっており、全体としては分散投資が奏功してマイナスを抑制したといえます。
なお、GPIFが運用する年金積立金は、公的年金制度の一部です。年金制度の持続性を高めるため、将来の少子高齢化を見据えて、現役世代の人口が多いうちに、保険料の一部を蓄えてきたものです。年金積立金の運用は、将来の年金受給者や現役世代のために長期的観点で行なわれているといえます。年金給付の財源は現在、その年の保険料収入と国庫負担で9割程度が賄われており、年金積立金の充当は1割程度となっています。そのため、短期的な市場変動に伴なう運用成果は、年金給付に影響を与えるものではありません。
GPIF改革から10年。累積収益額は121兆円
一般に、値動きが異なる資産で分散投資を行なうことで、価格変動リスクを抑制しつつ、長期的には安定的な収益が期待できますが、GPIFや前身の年金資金運用基金は、10年前まで国内債券に偏重した運用を行なっていました。2014年10月に運用方針などの改革が実施され、株式比率を高めるなどリスクを取りつつも国際分散投資を進めた結果、改革から10年間(2014年10月末~2024年10月末)で累積収益は121兆円と、大きく積み上がりました。
GPIFの基本ポートフォリオに注目
GPIFは、5年毎に策定する中期計画に基づき、長期的な基本ポートフォリオを定めて運用を行なっています。2025年3月を目途に基本ポートフォリオの見直しが行なわれるとみられ、GPIFの資産配分変更に伴なう巨額な資金の流出入が市場動向に影響するため、市場関係者の間では注目が高まっています。
運用成果に目が向きがちですが、GPIFの運用方針ともいえる基本ポートフォリオにも注目してみると、ご自身の中長期での資産形成の参考になるかもしれません。
- GPIFの公表データをもとに日興アセットマネジメントが作成
- 上記は過去のものであり、将来を約束するものではありません。