世界的にデータセンターへの投資が拡大する中、日本への注目の高まりとともに国内への波及効果が期待されています。

生成AIの利活用がデータセンター投資を後押し
データセンターが世界で増加している背景には、近年の社会のデジタル化や生成AI(人工知能)の普及、ビッグデータの活用進展に加えて、特にコロナ禍以降のリモートワークやオンラインサービス拡大により、データの処理・保存の需要が増加したことなどがあげられます。

生成AIは、従来のAIでは不可能だった創造的な作業を人間に代わって行なえる可能性を有しており、今後、様々な分野の生産性を向上させると期待されています。生成AIの開発や利活用を進めるためには、大規模な計算能力の確保が必要であることから、AIサーバーに特化したデータセンターの需要が特に高まっています。

日本でも進むデータセンター投資
こうした中、日本においてもデータセンターの建設が増えており、国も官民連携で整備する方針を示しています。そして、国内のデータセンターは、これまで8割超が東京・大阪圏に集中していましたが、地方での整備も進められており、地域経済の活性化や雇用の創出にもつながるとみられることもあり、国内で注目が高まっています(左下グラフ)。

また、米IT大手が日本でのデータセンター投資を加速する動きをみせるなど(右下表)、海外からの注目も高まっています。この背景には、日本の場合、他の先進国と比べてAI活用にポジティブであるとされること、人件費が安いこと、大企業のDX(デジタルトランスフォーメーション)化の余地が大きいことなどがあります。なお、アジアのデータセンター市場で最大規模を誇る中国を経済安全保障の観点から避け、安全な日本を選択する動きもあるといわれています。

期待されるイノベーション進展と周辺産業への恩恵
一方、国内のデータセンター投資が拡大する中で懸念されているのが、電力不足です。特に膨大なデータを処理するAIサーバーは、大量の電力を必要とするため、エネルギー効率改善が求められています。これに伴ない、半導体や通信などの情報処理技術や冷却装置といった付帯設備などのイノベーションによって、省エネ化が図られようとしています。

なお、半導体については、微細化や先端パッケージ技術などによってエネルギー効率を向上させる取り組みなどが進んでいます。このような先端半導体の需要の高まりは、日本が高シェアを誇る、半導体の製造装置や材料の追い風になるだけでなく、国内半導体産業全体の再強化にもつながると考えられます。

今後も生成AIの利活用をはじめ、デジタル化が進んでいくと考えられることから、データセンター投資の拡大と、イノベーションの進展などが、日本の半導体をはじめとする関連産業に恩恵をもたらすと期待されます。

【図表】[左図]日本のデータセンター市場推移(2017年~2029年予想)、[右図]米IT大手による日本でのデータセンター投資
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