金と国債は、ともに金融市場における代表的なリスク逃避先として知られており、株式などのリスク資産に投資している場合、これらとの併せ持ちで、ポートフォリオ(保有資産)の価値変動を抑制できると期待されています。ただし国債については、2020年頃から、世界的に株式との値動きの相関(連動性)が強まる傾向にあり(左下グラフ)、株価の下落局面で、ポートフォリオの価値変動を抑制する効果が低下しているとみられます。
こうした中、本稿では、株式に加えて、金または国債を併せ持ちした場合の投資効果を、長期(1985年1月~2024年10月)と近年(2019年11月~2024年10月)の期間区分ごとに分析し、その結果と背景などについてご紹介します。
本稿では、株式:MSCIワールドインデックス(配当込み、米ドルベース)、国債:FTSE世界国債インデックス(米ドルベース)、金:ロンドン現物価格(米ドル)を分析対象としています。
近年魅力を増す株式と金の併せ持ち
株式と、金または国債の併せ持ちが効果的かは、株式のみを保有した場合と比較して、リスク(リターンのばらつき)に対し、どれだけリターンが得られたかを示す尺度、即ち、運用効率が改善するか(右下グラフの原点からの点線が急になるか)が、判断材料の一つになります。
上述の期間区分ごとにみると、長期では、株式・国債、株式・金とも、株式のみの場合と比較して運用効率が改善する結果となり、これらの併せ持ちの有効性が示されました(右下グラフ【長期】)。特に、株式・国債では、国債のリスクが相対的に低いことが大きく寄与し、株式・金よりも高い運用効率が実現しました。
一方で、近年についてみると、株式・金の運用効率は株式のみとの比較で改善したものの、株式・国債については悪化する結果になりました(右下グラフ【近年】)。その背景として、株式・金については、株式と金の相関が低水準で推移する中、高インフレを受けた実物資産需要や地政学リスクの高まりによる質への逃避などから、金のリターンが大きく改善したことが挙げられます。対照的に、株式・国債については、高インフレを受けた主要国での金融引き締めの動きから、国債のリターンが低調だったことに加え、そうした動きが株式・国債市場における共通の懸念材料となり、両者の相関が強まったことが、逆風になったとみられます。
分散投資先として、国債とともに金に注目
近年パフォーマンスが冴えなかった株式・国債の併せ持ちポートフォリオですが、今後については、欧米が金融緩和局面にある中、国債のリターンに向上余地があるとみられることから、運用効率が徐々に改善すると期待されます。
ただし、地政学リスクや主要国における財政拡張が警戒される中、インフレ再燃のおそれも残ることから、株式・金の併せ持ちが引き続き有効に機能する可能性も考えられます。
こうしたことから、株式からの分散投資先として、国債だけでなく金にも注目していく必要がありそうです。
- 信頼できると判断したデータをもとに日興アセットマネジメントが作成
- 上記は過去のものおよびシミュレーションの結果であり、将来を約束するものではありません。