米大統領・議会選挙で共和党が完勝
11月5日に投開票が行なわれた米大統領選挙では、共和党のトランプ氏が勝利し、来年1月の大統領への返り咲きを決めました。
共和党は、同時に実施された上・下両院の議会選挙でも勝利し、トリプルレッド(大統領に加え両院を共和党がおさえる)が実現する見通し(左下図)になっています。
そこで本稿では、トランプ政権2期目で想定される政策(右下表)などについて、ご紹介します。
トリプルレッドで期待される減税や規制緩和
通商面については、全輸入品に10~20%、中国からの輸入品にはより高率の関税を課すとのトランプ氏の発言などからうかがえるように、保護主義的な動きが強まるとみられます。
また、移民政策を巡っては、不法移民の大規模な強制送還をはじめとする厳格化が見込まれます。上述の関税引き上げによる潜在的なコスト増加に加え、近年、移民が労働市場のひっ迫緩和に寄与してきたことを考慮すると、こうした政策が、米国内でのインフレ再燃リスクをもたらす可能性に留意が必要です。
さらに、防衛費負担を巡る同盟国への圧力強化や、温暖化対策の国際的枠組みであるパリ協定からの離脱などに伴なう、外交・安全保障面や環境・エネルギー面での混乱も警戒されます。
他方で、税制についてトランプ氏は、2025年に失効予定の所得税減税(トランプ政権1期目に導入)の恒久化や、法人税率の引き下げといった減税策の実施を掲げています。これらを実行に移す上では、予算面などで強力な権限を有する議会の勢力分布が鍵となりますが、今回の選挙を経て、トリプルレッドとなることで、実現可能性が高まるとみられます。
このほか規制面では、共和党綱領で明言された暗号資産や人工知能、自動車産業などの分野での規制緩和に加え、バイデン政権下で進んだ金融規制強化の動きの見直しが期待されます。
以上を総合すると、保護主義・米国第一主義的な政策が、特に他国経済に与える影響という点で、波乱要因になるおそれがある一方、減税・規制緩和が米国経済を支えるという構図になりそうです。
次期政権の好悪両面を反映する足元の金融市場
トランプ氏の勝利報道以降、米国株式市場では、減税や規制緩和への期待などから、概ね堅調な地合いとなっています。その一方で、インフレ再燃への警戒感から米長期金利が上昇したり、関税引き上げへの懸念が欧州株式への重荷となるなど、トランプ政権2期目で想定される政策の好悪両面を織り込む動きもみられます。
金融市場全体としてみると、これまでのところ大きな波乱は生じていないものの、トランプ政権2期目のチャンスとリスクに注目していくことが、引き続き重要となりそうです。
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