環境問題に貢献するEVとその種類
世界が直面している気候変動問題において、地球温暖化の一因といわれる温室効果ガスの排出量を大幅に削減できる点などから、EV(電気自動車)は、左下図のように、自動車業界における大きなイノベーションとなりました。EVには、完全に電力のみで動くBEVだけでなく、電力とガソリンを併用できるPHEV、ガソリンをメインの動力源としながら、走行時に蓄電が可能なHVのほか、水素を燃料とするFCV(燃料電池自動車)もあります。

環境への負荷を和らげるという観点では、BEVの拡大が期待されます。ただし、BEVには充電に時間がかかる、航続距離がガソリン車よりも短い、また車体価格が高額といった課題があるほか、充電インフラがまだ少ないという事情などもあり、欧州などでは現在、充電不要で、ガソリン車よりも低燃費、かつBEVよりも安価なHVに人気が集まっています。

中国製EVの台頭
EV市場のさらなる拡大が期待されるなか、中国では世界でもっともEV化が進んでいます。新興EVメーカーやバッテリーメーカーも台頭し、安価なEVが次々と発売され、価格競争が拡がっています。加えて、中国政府の莫大な補助金や税控除などの強力な後押しが、国内でのEV普及にとどまらず、EVメーカーの世界進出に繋がっており、中国製EVは世界での存在感を急速に高めています。そうした中、中国製EVに対して、米バイデン政権が関税率を従来の4倍に当たる100%に引き上げることを決定し、EU(欧州連合)も追加関税を決定するなど、自国(域内)産業の保護に向けた対抗措置が取られています。

中長期では世界的にEVシフトが続く見通し
世界のEV販売台数の推移をみると、2024年は、前年に比べて、伸び率が鈍化すると予想されています(右下グラフ)。その理由として、充電インフラの整備に時間を要していることなどもあり、欧米などで足元、HVを見直す動きが拡がっていることなどが挙げられます。しかし、温室効果ガスの排出量を全体としてゼロにする「カーボンニュートラル」の実現は世界的な課題であり、EVが果たす役割に期待が寄せられています。また、バッテリー技術の進歩などによりバッテリー生産コストが低下していることは、EVの製造コスト低下にもつながり、普及を後押しするとみられます。足元では鈍化傾向がみられるものの、EV販売は今後も増加が予想され、ガソリン車からEVにシフトする流れは変わらないと考えられます。

【図表】[左図]EVの種類と特徴、[右図]販売台数は今後も増加することが予想される
  • 上記は過去のものおよび予想であり、将来を約束するものではありません。