25年の世界見通しを0.1ポイント上方修正
IMF(国際通貨基金)は1月17日に最新の世界経済見通しを発表し、世界のGDP成長率について、2025年の想定を0.1ポイント上方修正しました。そして、2000~19年の平均成長率の+3.7%を下回るものの、(昨年10月の前回予測と同じ)24年実績推計の前年比+3.2%を底として、25、26年とも+3.3%と、安定的に推移するとしています。

また、インフレ率は、24年の5.7%に続き、25年が4.2%、26年は3.5%と想定し、コロナ禍やロシアのウクライナ侵攻など、ここ数年の世界的な混乱が引き金となった大幅な物価上昇期が終わるとして、金融政策の正常化が進むとみています。

米国および中国の見通しを上方修正した一方、ユーロ圏の見通しを下方修正
個別の国・地域の見通しでは、米国については、堅調な労働市場などを背景に個人消費が堅調なことや投資の加速などを背景に上方修正しました。

一方、ユーロ圏については、製造業を中心とする経済活動の弱さや、消費者信頼感の低さ、エネルギー価格の高止まり、政治や政策動向を巡る不確実性の高まりなどから、下方修正しました。

また、中国については、昨年11月に発表された一連の景気刺激策が、貿易面での不確実性の高まりや不動産市場の低迷の影響を相殺するとして、25年は0.1ポイント上方修正し、26年は0.4ポイントの上方修正としました。

米国とその他との乖離が拡がる可能性も
昨年、多くの国で選挙が行なわれ、政権が交代したことなどから、政策面での不確実性が高まっています。こうした中、今回の世界経済見通しでは、現行の政策を前提としており、例えば、トランプ米政権下で想定される、貿易や移民、税、さらに規制などに関する政策変更は織り込まれていません。

そのため、IMFは、短期的なリスク要因として、トランプ政権の政策が、米国の経済を押し上げる可能性だけでなく、インフレ率を上振れさせる可能性も挙げています。また、後者により、利下げが妨げられたり、あるいは、利上げが必要となり、米ドル高が起きる場合には、新興国での金融環境の引き締まりが想定されるとしています。その他に、欧州のエネルギー部門や中国の不動産部門を中心とする調整による逆風、さらに、政策の不確実性の高まりなどから、大半の国では下振れリスクが目立つとしています。このように、上下マチマチの短期的なリスクにより、米国と他の国・地域との成長や物価の乖離が拡がる可能性を指摘しています。

【図表】[左図]IMFの世界経済見通し(実質GDP成長率)、[右図]世界の実質GDP成長率の推移
  • 上記は過去のものおよび予測であり、将来を約束するものではありません。