1月20日、米トランプ政権の2期目が始動しました。同政権による規制緩和や減税への期待が高まる一方、関税引き上げといった保護主義政策が警戒されており、株式市場の変動性が高まりやすい状況にあるとみられます。こうした中、本稿では、米国株式(S&P500指数)の株価リターン(年次騰落率)に関する寄与分解を通じて、今後のポイントや、株式投資で何が重要かを考えてみます。
今年は投資家のリスク認識の変化に留意
下図1グラフのように、①企業業績見通し、②金利、③投資家のリスク認識、の3要因による寄与分解を行なうと、株価リターンに何が影響したかを把握することができます。また、こうした寄与分解の考えは、将来の株価リターンを考えるヒントにもなります。
上述の3要因について今年の状況をみると、①企業業績見通しは、2026年にかけて二桁成長が続くと市場で予想されるなど良好です。②金利については、米経済の底堅さなどを受け、昨年末以降の上昇が目立ちますが、今後は米利下げの継続などを背景に低下すると市場では予想されています。そのため、景気や金融政策など実体経済の動向との関係性が強いとみられる①、②は、ともに株価リターンにプラス寄与する見込みです。もちろんトランプ政権の政策がこれらの予想を変化させる可能性はあるものの、好悪マチマチの政策内容を考慮すると、①、②の寄与の合計がマイナスになる可能性は限定的とみられます(下図1【A】部分)。
ただし、③投資家のリスク認識は、①、②と異なり、実体経済の動向から予想することは困難です。過去を振り返ると、トランプ政権の1期目に米中貿易戦争が本格化した2018年には、①が良好だったにもかかわらず、③の悪化が響き、株価リターンがマイナスになりました(下図1【B】部分)。今年については、①、②のプラス寄与が見込める状況ですが、トランプ政権の政策を巡る不確実性が高い中、③が株価リターンを押し下げるリスクが考えられます。
長期では企業業績が株価リターンに大きく寄与
もっとも長期平均でみると、③投資家のリスク認識の株価リターンへの寄与は小幅で、寄与の大半は①企業業績見通しであったことがわかります(下図1【C】部分)。こうしたことは、株式への長期投資姿勢を維持することで、①の改善を捉えつつ、それ以外の影響を平準化できる可能性を示しています。
トランプ政権の政策を巡る不確実性が高い中、③投資家のリスク認識の変化が注目されますが、それに振り回されることなく、長期での株価リターンの主な源泉は①企業業績見通しの趨勢的改善である点を意識することが重要と思われます。


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- 上記は過去のもの及び予想であり、将来を約束するものではありません。