日本では見過ごされがちな、アセアン地域・同主要国の経済の現状をお伝えします。

株式市場:米政策を巡る不確実性などが重石に
25年2月のアセアン地域の株式市場でも、トランプ米政権の関税政策を巡る不確実性などが域内全体の重石となる場面がみられました。国別では、インドネシアとタイの株式相場が下落しました。インドネシアでは、国営銀行の低調な決算内容やエネルギー関連企業の主要株価指数への組入見送りなどが相場を押し下げました。タイでは、24年10-12月期のGDP成長率が前年同期比で市場予想を下回ったことや、中央銀行が経済の下振れリスクの増大などを理由に利下げを行なったことなどが嫌気されました。

一方、その他の主要株式相場は堅調となりました。ベトナムでは、政府による25年のGDP成長率目標の引き上げを受け、経済刺激策への期待が高まる中、金融セクターなどを中心に上昇しました。フィリピンでは、インフレが落ち着き、年内に少なくとも0.5ポイントの利下げもありうるとの中銀総裁の言及などから、堅調な推移となりました。マレーシアでは、市場予想を上回る24年10-12月期GDP成長率の発表などが追い風になりました。シンガポールでは、主に金融セクターの好決算や消費支援策を盛り込んだ25年度予算案の発表などが好感され、同国の主要株価指数は2ヵ月連続で史上最高値を更新しました。

ここからは、2月に発表された経済指標や出来事などを中心に、ご紹介します。

タイ:政策金利を0.25ポイント引き下げ
17日に発表された24年のGDP成長率は、10-12月期が前年同期比+3.2%、通年では前年比+2.5%となり、いずれも市場予想を下回ったものの、前期から加速したほか、四半期では9期ぶりの高い伸びとなりました。また、タイ中央銀行は26日、経済の下振れリスクの増大や米関税政策を巡る不確実性などを背景に、政策金利を0.25ポイント引き下げ、2.00%にすることを発表しました。

フィリピン:政策金利を据え置き
フィリピン中央銀行は13日、主要政策金利を5.75%に据え置くことを決定しました。市場では、前3会合に引き続き0.25ポイントの利下げが予想されていました。同銀総裁は会見で、経済成長見通しは堅調だとして、海外の政策を巡る不透明要因の影響などについてより深く分析することを優先したと、据え置きの理由を述べました。なお、月初に示した、年内に少なくとも0.5ポイントの利下げを実施する可能性があるとの見解は維持しました。

【図表】アセアン地域・同主要国の株価指数と為替(対円)の推移(左)および直近1ヵ月の騰落率(右)
  • 上記は過去のものであり、将来を約束するものではありません。