日本では見過ごされがちな、アセアン地域・同主要国の市場・経済などの現状をお伝えします。
株式市場:アセアン株式相場は小幅に上昇
米国による関税政策の動向が注視される中、25年3月のアセアン地域の株式相場はわずかな上昇にとどまりました。国別では、インドネシアやフィリピン、シンガポールなどの株式相場が上昇しました。インドネシアでは、政府の積極的な財政政策を受け、財政の健全性に対する懸念から月半ばに相場は軟調となったものの、その後は割安感の高まりなどから上昇に転じました。フィリピンとシンガポールでは、2月の消費者物価指数が前年同期比で鈍化し、市場予想も下回ったことなどを受け、追加の金融緩和期待が高まる中、株価は上昇しました。なお、シンガポールの主要株価指数は、3ヵ月連続で史上最高値を更新しました。
一方、タイやマレーシアの株式相場は下落しました。タイは、東南アジア最大の自動車生産・輸出拠点であることから、米国の自動車関税による影響が懸念され、売りの動きが強まりました。マレーシアでは、経済的なつながりの深い中国で景気刺激策が発表されたことなどが追い風となり、株価が上昇する場面も見られたものの、米関税政策を巡る先行き懸念などから、月を通して概ね軟調な動きとなりました。
ここからは、3月に発表された経済指標や出来事などを中心に、ご紹介します。
タイ:地震による経済活動への影響は限定的
28日、ミャンマー中部を震源とする大規模地震が発生し、隣国のタイでも、証券取引所での同日午後の取引停止などといった影響がみられました。しかし、証券取引所での取引は31日には再開されたほか、タイ工業連盟の調査では「全産業分野で製造活動は地震の影響をほとんど受けていない」との内容が報告されており、地震による経済活動への影響は限定的とみられます。
マレーシア:25年のGDP成長率予測を発表
マレーシア中央銀行は6日、11会合連続での政策金利の据え置きを決定しました。同中銀は、世界的なコスト上昇圧力の緩和などを背景にインフレは25年も管理可能な水準にとどまるとの見解を示した一方、世界経済の不確実性の高まりに対しては警戒感を示しました。また、同中銀は24日に発表した年次報告書で、25年の実質GDP成長率の予測を4.5~5.5%としました。同報告書では、世界的に不確実性が増す中においても、堅調な内需や輸出の緩やかな拡大により、24年並みの成長率が達成できるとの見通しを示しました。

- 上記は過去のものであり、将来を約束するものではありません。