J-REIT相場は、2022年以降、上値の重い展開が続いていましたが(左下図①)、2025年に入り、割安面が海外投資家に注目されつつあります。
2024年までのJ-REITの状況
J-REIT相場がこれまで冴えなかった要因のひとつに、日米の金利上昇圧力が挙げられます。金利の上昇は、一般的に、REITの資金借り入れコストの上昇とそれに伴なう財務悪化リスクのほか、他資産との利回り格差の縮小による利回り面での魅力低下などから、REIT価格にとってマイナス要因とされます。米国では2022年ごろからインフレの過熱感を背景に、政策金利が引き上げられ、長期金利が上昇しました。これは、J-REIT市場において売買金額の過半を占める海外投資家にとっては、J-REITの利回り面での魅力低下につながり、売られる要因となりました。その後、米国の長期金利が高止まりするなか、国内ではマイナス金利政策が解除され、長期金利が上昇したことなどを背景にJ-REITは足踏み状態が続きました。
割安とみられるJ-REIT
足元のJ-REITは、国内外の金利動向がREIT価格の足かせとなる一方、割安感が強まっているとみられます。J-REIT価格が割高か割安かを判断する指標として、保有不動産の時価である純資産価格(NAV)と市場価格を比較したNAV倍率があります。足元のNAV倍率は1倍を大きく下回っています(右下図②)。
こうしたなか、2025年1月にシンガポールの投資ファンドが、日本の大手REITに対してTOB(公開買い付け)の実施を発表しました。このTOBは、大手REITの価格が堅調に推移したことなどから買い付け予定数の下限に達せず不成立となったものの、その割安さが海外から注目されている証左として、市場では好材料と受け止められました。さらに、TOBを受けたREIT側としては、例えば物件売却の際に売却益を内部留保するのではなく配当に回すなど、割安感を抑える対策を講じるとみられます。こうした対策は、REIT価格上昇や増配などにつながることが期待されます。
足元では、日銀の追加利上げによる長期金利の上昇圧力が高まる可能性があります。しかし、利上げの背景である景気回復は、賃料や保有不動産の時価の上昇などREITにとってのプラス要因でもあります。さらに、J-REITには前述の割安感がみられる点や、他資産や過去と比較した利回り水準(右下図③)からも投資妙味のある資産だといえます。また、REITは株や債券と異なる価格特性を持ち、分散投資に有効な資産とされることからも、投資先のひとつとしてJ-REITへの投資を検討されてはいかがでしょうか。
![【図表】[左図]①J-REITの推移と年間騰落率、[右上図]②J-REITのNAV倍率推移、[右下図]③各資産の利回り推移](/files/market/rakuyomi/images/rakuyomi_vol-2084.jpg)
- 信頼できると判断したデータをもとに日興アセットマネジメントが作成
- 指数に関する著作権等の知的財産権その他一切の権利は、当該指数の算出元または公表元に帰属します。
- 上記は過去のものであり、将来を約束するものではありません。