金相場は今年に入り騰勢を強めており、4月11日には金(スポット)価格が史上初めて1トロイオンス=3,200米ドル台をつけました(グラフ【A】)。本稿では、堅調な金相場の背景と今後のポイントをご紹介します。
政策の不確実性と脱米ドル化が金高騰の背景に
金の価格高騰の背景としては、まず、米国で昨年11月にトランプ氏の大統領再選が確定して以降、経済政策の不確実性が急激に高まっている点が挙げられます。例えば、新聞記事などの分析に基づく政策不確実性指数は、第1次トランプ政権で米中貿易摩擦が激化した2018~19年の水準を大幅に上回り、コロナ禍時のピーク(2020年)水準付近まで急上昇しています(グラフ【B】)。こうした中、投資家のリスク回避先として金が選好されているとみられます。
また、中国など新興国の中央銀行が、米国による米ドル建て資産の凍結などの潜在的リスクへの備えとして、外貨準備資産の脱米ドル化と金へのシフトを進めている点も寄与していると考えられます(グラフ【C】)。
米トランプ政権の政策姿勢を受け高まる金需要
金相場の今後を展望する上では、米トランプ政権の政策が引き続きポイントになると思われます。
中でも、相互関税などの強硬な関税政策は、世界景気に打撃を与えるだけでなく、短期的にはインフレ圧力を高める可能性があります。こうした状況下では、リスク回避先であり、かつ実物資産でインフレに強いとされる金の魅力が高まりやすいと考えられます。また、米FRB(連邦準備制度理事会)高官は、関税政策の景気・インフレ両面への影響を見極める姿勢を示していますが、仮に、景気減速が顕在化し、利下げが実施されれば、金利がつかない金への追い風になるとみられます。
さらに、米トランプ政権の通商・国防両面における同盟国をも対象とする強硬姿勢が、米ドル建て資産への投資抑制を招くリスクも注目されます。相互関税の発表を受けて、仏マクロン大統領が企業に対米投資の凍結を呼びかけたことなどは、その前兆とも考えられ、米ドルの地位低下と金の相対的な価値向上につながる動きであると思われます。
こうしたことから、米トランプ政権の政策がもたらす様々なリスクへの備えとして、金が引き続き市場で注目を集めるとみられます。

![【図表】[左図]【B】グローバル政策不確実性指数の推移、[右図]【C】世界の中央銀行による金の購入量](/files/market/rakuyomi/images/rakuyomi_vol-2085_02.jpg)
- WGC(ワールドゴールドカウンシル)やScott Baker,Nicholas Bloom and Steven J.Davis,“Measuring Economic Policy Uncertainty”の関連サイトなどの信頼できると判断したデータをもとに日興アセットマネジメントが作成
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