次世代自動車への注目が高まる
自動車業界では今、「ソフトウェアによって定義される車」を意味する、SDV(ソフトウェア・デファインド・ビークル)が注目されています。SDVとは、自動車を制御するソフトウェアを更新することで、機能をアップデートできる次世代自動車です。現状では海外新興勢が先行しているとされますが、日本政府は2024年5月に「モビリティDX戦略」を策定し、2030年に世界で最大4,100万台に達すると見込まれるSDV車両のうち、日本勢のシェアを3割に押し上げるとの意欲的な目標を掲げています。
車載半導体の需要は大きく拡大
近年、自動車産業において、EVやADAS(先進運転支援システム)、SDV、自動運転など、様々な技術が大きく進展しつつあります。そして、技術の進化に欠かせないのが半導体です。1970年代に初めてエンジンの電子制御が実用化されて以降、自動車分野では、燃費や性能の向上に向けた半導体の活用が急速に拡がりました。自動車に搭載される半導体の数は加速度的に増加しており、90年代半ばには乗用車1台につき20~30個とされていたECU(電子制御ユニット)搭載数は、現在では100個に達するとも言われます。今後、世界でSDV市場の拡大が進むことにより、車載半導体の需要は2025年からの10年で185%伸長するとの見通しもあります。
高性能車載半導体の研究開発が急務
加えて、半導体の機能についても、多様化や高性能化、低消費電力化などが求められるようになりました。例えばSDVでは、車外とつながり、膨大なデータを高速処理しながら安全に走行するための専用の車載半導体が必要とされます。そうした中、2023年12月に、自動車メーカーや電装部品メーカー、半導体関連企業などの14社からなる「自動車用先端SoC技術研究組合(ASRA)」が設立され、オールジャパンでの高性能な車載半導体開発の取り組みがスタートしました。
SoC(システム・オン・チップ)とは、種類の異なる複数の半導体を組み合わせ、一つのチップにまとめた半導体です。小型化や高性能化、多機能化などを実現する、この最先端パッケージ技術は、チップレットと呼ばれ、近年、スマートフォンやサーバなどで活用され始めています。多様な車種を扱う日本の自動車メーカーは、これまでグレードごとに異なる半導体を使用してきましたが、チップレット技術を活用することにより、半導体開発の期間と費用を大きく削減できる可能性があります。こうしたことなどから、チップレットはこれからの自動車開発競争を左右する重要な技術として注目されています。
自動車開発が半導体産業の追い風となるか
チップレットは日本勢が高い優位性を持つ「後工程」の技術であるほか、使用する部材にもプリント基板やインターポーザ(中間基盤)といった、日本企業が競争力を持つ分野が複数あります。同技術に対する政府の期待も大きく、経済産業省は2024年3月、ASRAに対して10億円*の支援を決定したのに続き、今年2月には、支援額を410億円*に大幅拡大しました。いずれも上限額
日本が得意とする「ものづくり」において、今後の競争力の鍵を握ると言われる半導体。自動車分野での技術進展が、日本の半導体産業の新たな成長ドライバーとなることが期待されます。

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