25年は0.5、26年は0.3ポイントの下方修正
IMF(国際通貨基金)は4月22日に発表した最新の世界経済見通しで、米政権の関税措置を背景に、向こう2年の世界のGDP成長率を大幅に下方修正しました。2025年は前年比+2.8%と、19年以来*の3%割れ、26年についても、+3.0%に改善するものの、2000~19年の平均の+3.7%を大きく下回ります。なお、世界の貿易量の伸びは、25年に前年比+1.7%と、前年の半分以下に急減速すると見込んでいます。

また、インフレ率の見通しについては、総じて先進国で上方修正、新興国で下方修正し、世界全体では、25年に前年比+4.3%、26年には+3.6%と、従来よりも緩やかな鈍化を想定しています。

米・中やメキシコの下方修正が大きくなった一方、ユーロ圏の下方修正は限定的
主要な国・地域の見通しでは、米国の下方修正が目立ち、25年の成長率は+1.8%と、16年以来*の2%割れとなっています。その主な背景は、政策の不確実性の高まり、貿易摩擦、消費の伸びが従来予想を下回ることに伴なう需要の鈍化です。ただし、景気後退については、可能性は高まっているものの、今回の見通しでは免れると想定されています。

中国については、財政支出の拡大方針が掲げられているものの、高関税の影響が大きく、25年の成長率は政府目標を下回る+4.0%となっています。

また、メキシコは、25%の米関税が発動済みのため、下方修正が大きくなった一方、ユーロ圏の場合、米関税の税率が相対的に低いほか、財政支出の拡大見通しもあり、小幅な修正となっています。

リスクは下振れ方向
なお、今回の見通しは、4月2日に発表された米相互関税や、それを受けての各国・地域の当初の反応を含む、4月4日時点で入手可能な情報を前提としたもので、その後の米中の報復措置などは反映されていません。IMFは、現状は極めて複雑かつ流動的だとして、今回の見通しを「参照予測」と位置付けています。

IMFは、各国・地域が貿易政策の明確さと安定性を実現するために協調すれば、見通しは即座に明るくなるとしています。ただし、リスクは下振れ方向に明確に傾いていると強調しています。そして、貿易摩擦が激化すれば、世界を取り巻く不確実性はより高まり、金融市場の振れもさらに拡大し、金融環境が引き締まることになるとして、複合的な影響から世界経済の成長見通しが一段と低下しかねないと指摘しています。

コロナ禍に見舞われた2020年を除く

【図表】[左図]IMFの世界経済見通し(実質GDP成長率)、[右図]世界の実質GDP成長率の推移(1990年~2026年予測)
  • 上記は過去のものおよび予測であり、将来を約束するものではありません。